大きいものほどうまいの法則:クログチ
こんにちは、夢海です🐟️
クログチという魚をご存知でしょうか?
関東ではめったにおらず、数年前にクログチの若い個体が初めて東京湾から記録されたというほど、東日本及び関東では普通獲れないような魚です。
一方で西日本ではどうかと言うと、専用の釣り船がある他、食用魚として利用されていたりと、メジャーではないものの知る人ぞ知るといった程度には知名度のある魚です。
目次
クログチの特徴
まずクログチとはどんな魚かご説明していきましょう。
まずクログチはニベの仲間、ニベ科に属します。
そもそもニベの知名度がそれほど高くなく、釣りの対象魚であるオオニベなどを知る方は太平洋、それも黒潮の当たる海域近くにお住まいの方が多いのではないでしょうか。
しかしこれを“通称“で例えるならイシモチが最も一般的かもしれません。
普通イシモチと呼ばれる魚はシログチやニベなどに限られてしまい、クログチ自体をイシモチと呼ぶことは少ないです。
イシモチであれば知っている!という方は、逆に関東近辺にお住まいか、釣り人の方が多いと思われます。
ニベ、もといイシモチの仲間は耳石が発達しており、石を持っているという意味でイシモチの名で呼ばれる事が多いです
耳石とは、体の平衡感覚を保つ役割をもつ、炭酸カルシウムの粒になります。
これは脊椎動物であれば誰しも持っており、特に種類の多い魚類は形状も異なるためコレクターがいるほど。
これが北海道でイシモチを知っているという方はイシガレイの可能性があるというのはまた別のお話。
そんなクログチを紹介していく訳ですが、実は2年ほど前にも記事にまとめたことがあります。
同じ魚種はたびたび買っては食べてみてるわけですが、“なにか特別な事情がない限り“は、面白みが欠けてしまうことから記事にすることなく終わってしまいます。
さて、今回の書こうと思った動機はサイズが特大であるということ。
愛媛県産の約1600グラムと、クログチの中でもかなり大きいサイズ。
というより私自身、これまでこの大きさのものは見たことがありませんでした。
身を触ると張りがあり、腹もしっかりしていたので迷わずに購入。
食べる習慣のない関東では通常キロ¥1000しないようなところ、今回はやや値が張りキロ¥1600しましたが勉強料にしては安いものです。
九州などの一部地域では釜借(カマガリ)とも呼ばれ、ご飯を釜ごと借りるほど美味いとも言われる魚です。
全身を光沢のある大きな鱗で覆われ鈍く光ります。
顔はこちらを見透かすような大きな目。
やや深場に生息する魚なだけあり、その特徴がしっかりと現れています。
大きい円状の鱗が全身にびっしり揃っています。
一見頑丈そうに見えますが、鱗は落としやすいため下処理は比較的楽に出来ます。
そして長いこと気になっているのがこの尾鰭。
側線から、というより側線鱗が伸びて鰭の上にまでかかっています。
探し回ったものの、この事に記述している文献に出会えず…
何かご存知の方がいらっしゃいましたらご教授頂きたいです。
また、余談にはなりますが、クログチは水族館での展示が非常に少なく、今年2023年の3月に東海大海洋科学博物館にて、初めてお目にかかりました。
クログチの料理
クログチの刺身
まずは無難に刺身から頂きます。
水洗いをし皮を引き切りつけていきますが、この皮を引く時に感じたもったりとした重みは、皮下が真っ白にコーティングされるほどの脂のせいというのは言うまでもありません。
純粋にわさびと醤油で頂きます。
噛み切る時に鈍くコリッとした食感があり、身の密度が高いことが分かります。
その歯ごたえを感じた後から鼻を抜ける爽やかな香り。
もったりとした食感とは反対に、味はすっきりしています。
クログチのかぶと焼き
水洗いし、半割にしたクログチは、頭の鱗をよく落としておく。
頬の鱗は大きいため、湯をかけずとも鱗落としで十分に落ちます。
これを焦がさぬようじわりじわりと焼き上げ、火が通れば完成。
頬肉は線維が崩れず、頬肉丸ごと
カマの部分もまたうまく、こちらはサラリとした脂が感じられ、アルミホイルも脂の海が出来ていました。
クログチの握り
3枚に卸した身のカミのほうを使用。
丁寧に血合い骨を抜き取り切りつける。
しっとりとした非常によい身質をしていて、酸味をほのかに感じる香り、舌の上で転がすと感じられる脂の甘味がシャリとよく合います。
皮を炙ってみても間違いなく美味いでしょう。
今回試して見たかったものの、あまりの美味さに炙りの分を忘れてしまいました。
またの機会に!
クログチのムニエル
クログチは和食だけでなく洋風にも化けることの出来る優等生。
今回は小麦粉と塩こしょう、各種ハーブ類をブレンドしまぶしたものをバターとオリーブオイルでじっくり焼き上げました。
ハーブの爽やかな香りに包まれたカリカリの表面とふわふわな中身のメリハリある食感の違い。
単に淡白ではなく、皮目に潜む嫌みのない旨味。
ハーブやオリーブオイルなどの素材と上手いことにかみ合い、クセというものを感じさせません。
クログチのフライ
脂ののった腹の上の方の部位を贅沢にフライにしてみました。
贅沢なことをしているからこそ、味の方も当然うまくなるわけで、過去に食べたフィッシュフライで5本の指には入ってきます。
大切り厚切りにしたため、ホックホクなクログチの身を最大限堪能できます。
クログチをフライにする機会があれば豪快に大切りに。
これ覚えておいて下さい。
クログチの西京焼き
最後は余っていた西京味噌があったので、切り身を漬け込みました。
身の質はいいし、皮目に旨味があることも知っていたため絶対に美味くなるという安心感。
それどころかこれを食べるのが楽しみで、当日の仕事はまあ捗りました。
予想を上回る美味さに、もう1尾買い、漬け込んでおけば良かったと後悔するのは言わずもがな。
身離れがよく、旨味の詰まった皮はもっちりとした食感が残っていて、噛むほどに味わい深くなっていきます。
魚のうまさあり、味噌のうまさあり。
この日は新潟土産の日本酒と共に。
明日もまだ残ってるかな。
クログチの評価
価格 ・・☆☆☆
コスパ ・・☆☆☆
珍しさ ・・☆☆☆
味わい ・☆☆☆☆
・価格
知名度に比例せずやや高い魚。漁獲される地域では価値が高いが、産地が限定的でギャップがある。近年関東などでも知名度が上がりつつあり、大型のものはより高値になるものと考えられる。
・コスパ
歩留まりは普通。あらからはいい出汁が取れるため確保必須。
・珍しさ
関東ではやや希少。より北へ行くと九州などの産地と繋がっていない地域ではあまり見られない。
・味わい
大変美味。好みは人によるが、脂ののり・しっとりとした質・刺身でうまく、また加熱しても美味いなど非常に万能である。
今回は特大のクログチを食べてみました。
普段それなりに目にする魚ではあるものの、突然に大きい個体を見かける事があり、そんなものは当然食べたくなります。
魚は小さくとも美味い個体は存在するものの、規格外とも呼べるような特大の個体はその魚のポテンシャルを最大限持っている事が多いです。
記録としては大きいものから小さなものまで、良し悪し関係なしに食べるというのが偏りのないデータとなりますが、その魚の最高値を知りたくなるもの。
また面白いものを見かけたら記事にまとめたいと思います。
副管理人:夢海 未利用魚の有効活用方を探して、様々な魚種を食べて美味しく食べられる方法を研究しております。今まで550種以上の魚類を食べてきました。変わった魚の食べ方を中心に公開させて頂きます。どうぞよろしくお願いします! Twitter: @YUMEUMI27 ブログ: 夢海のまったり魚日記
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