幻の生きた化石ラブカは、まさかの美味しい白身魚!?

皆さんこんにちは🦈

夢海です。

 

今回はとんでもないものを仕入れてしまいました!

時は遡り年末真っ只中、街行く人々も慌ただしそうに動き出すだろうという12月28日。小田原にあるお魚屋さん「小田原魚國」さんがSNSで発信したあるお魚の水揚げ情報がタイムラインを激震させました。私はそれを見てもう無いだろう、とダメ元で連絡。すると、引き取りにくる事を条件にまだ残っているとの事!

仕事もあり30日までお取り置きして頂く事にはなりましたが、年末ギリギリに2020年の目標であったこの「ラブカ」をなんとか入手する事が出来ました。

 

こちらの魚國さんには夏にインタビューでお世話になり、3月にはアオザメというサメを送って頂いたりと、大変お世話になっているお店です。

 

小田原漁港より水揚げされた獲れたて新鮮の魚をズラーッと店頭に並べ、人だかりが出来ている程、街行く人の目を奪います。

30日、始発電車に乗り込み海岸を散歩してから店舗へ。

 

ようやくご対面です。

 

ここからまたラブカを連れて電車での長旅。

そういった経緯でようやく我が家に。

 

計測した結果、129cm、4,65kgと我が家にやってきた魚の中でもかなり大きいものでした。道理で重かった訳だよ…(笑)

因みに過去最大のものは139cm6,9kgのドチザメ。

 

僅か10cmの差しかないのに重さはかなり違います。

見た目通り、ラブカはスリムなんだね。

そのドチザメの骨格標本と並べて撮影したりもしました。

 

それでは、じっくりと観察して調理していきましょう!

 

 

生きた化石ラブカとは!?

見出しにもある通り、生きた化石とも呼ばれているラブカ。白亜紀の地層から化石が見つかっている程、古いサメの特徴を残しているサメです。実は日本近海、太平洋に留まらず大西洋など世界中の海に分布しているんですよ。

その中でも南アフリカで見つかった個体は別種として記載されており、現在ラブカは2種類いるとされています。

そしてラブカといったら特徴的なのはこの三叉状に伸びるズラッと並んだこの歯!

この鋭い歯に観察や標本にする際の処理の途中で何度もやられました…(笑)

※私は素手で観察していますが、本当にスパッと切れてしまうので軍手をしましょう。引っかかったらなかなか抜けない構造をしています。

 

動きがあまり早くない印象がありましたが、この歯があれば獲物もガッチリと捕まえる事が出来るのかな。

そして6対ある鰓もやはり特徴的です。その隙間から顔を覗かせるのが真っ赤な鰓です。こちらもラブカの印象深い特徴でもあります。

 

それでは捌く(というより解剖?)始めて行きます。

まずは内蔵を取り出します。頭はこの時に落としてしまいましょう。

中から現れるのは巨大な肝臓とほぼ空っぽの胃袋。

ちなみにこの肝だけで1キロあります。

サメの肝といえばサプリメントなんかで利用されていたりもしますが、このラブカは肝にワックスエステルを保有し、消化出来ない酵素のため多量食べてしまうと下痢などを引き起こすので食べるには要注意です。

 

ひょろひょろの胃の中からはドロドロに溶けたソコダラの仲間が。※画像自主規制

背骨と頭部がかろうじて分かるくらいなので、細かい種類までは同定出来ませんでした。

 

骨格を残して全身骨格標本にする為、軟骨を傷付けないように気をつけていきます。出来るだけ背骨を切り取りたくないので、この巨体をまな板からはみ出た状態で捌いていきます。

 

まずは鰭を落として捌きやすいようにしていきます。

鰭も勿論骨格にするため根元を傷付けないよう慎重に行います。

 

サメは背骨が一本だけシュッと入っているだけなので、どこが体の中心かしっかりと意識して背骨に合わせて捌かないと酷い見た目になってしまいます。

↓こんな感じにガタガタに…

 

半身を卸せたら残りは骨だけを外していきます。こちらも変わらず慎重に慎重に…。

卸した身を半分に割り、皮を引いて切り身にしていきます。

真っ白な身にほんのりピンク色の血合いがとても綺麗です。サメにしては珍しく、脂らしさも感じられます。

そして切り身にした状態でも、ドリップ(臭いの元となる水分)がそれ程出てきません。上質な身です。

 

お刺身用のサクも忘れずに…。

取れた切り身は約2キロ。全体体重が4,6キロなので、歩留まりは約43%。肝を含めた場合の過食部は65%。肝が総重量の大多数を占めていました。肝は今回使用しません。研究されている方に譲る予定です。

サメは骨が少ない分歩留まりはいいと言われていますが、純粋に食べる肉で言えば少なめでしたね。

今回は大変珍しいものを仕入れたのでどどんと7種類の料理で食べ尽くしたいと思います!

それでは調理したもののご紹介!

 

ちなみに、取れた骨類は肉を取って薬品で処理してから乾かして完成です!こちらも記事の最後でご紹介~!

 

 

美味しいラブカのフルコース

ラブカの鮫ニラ

1品目はラブカの鮫ニラ!肝を使いレバニラにしようかと思いましたが、ワックスが含まれてると言うことで切り身を代用。

ゴマ油、ニラと共にサッと炒めて完成です。

 

見た目に香りが非常にいい!さて、気になるお味は…。

 

 

うん!美味い!!

火を通しても固く締まり過ぎない身をしている為に、この調理法にピッタリ。フワッとした身が特徴的ですね。まるではんぺんなどの加工品のような、そんな軽い食感です。味もよく染み込んでいてあっという間にペロリ。

 

夏場のスタミナ料理にいいかも知れませんね!ラブカを食べたというだけで力強くなれた気がします💪

 

ラブカ天麩羅

続いてはラブカの天麩羅です。

 

天ぷらの盛り合わせに登場しても霞まない味わいは主役級。思わず「おほほ。」と笑ってしまう旨さ!揚げてもふんわり、ぷりっとした食感です。

ドリップ(臭みの元となる水分)をしっかりと抜いた為臭みは全くありません。そして鶏肉のようなぷりっとした繊維質が何ともうまい。その繊維の隙間に天つゆが染み込んできます。

厚みのある部位を揚げたので食べ応え抜群でした。

 

 

ラブカ唐揚げ

続けて揚げ物料理の唐揚げです。

一晩じっくり味付けをしました。ニンニク醤油の香りがとてもいいです。七味とマヨネーズで頂きます。

見た目はよく見かける普通の唐揚げ。中身はラブカというドキドキ仕様。とてもワクワクしますね(笑)

 

 

味は間違いなく◎

とっっっても美味しい!高級なお店で食べるというより、普通の居酒屋さんにありそうな感じ。居酒屋さんのメニューとして欲しい程です。

やはりこちらも食感は鶏肉に近いです。よくテレビなんかでサメを食べる所を紹介するとコメンテーターが揃って鶏肉みたいと言いますが、癖もなく繊維がシャリシャリとほぐれる感じは紛れもなく鶏肉に限りなく近いと思います。

 

ラブカフライ

揚げ物は天麩羅、唐揚げ、フライの3品で試しました。

沼津港などではサメフライバーガーがあったりと、サメはフライのイメージが強いという方もいらっしゃるかと思います。

勿論これには理由がちゃんとあり…めちゃめちゃ美味いんです!!

 

タルタルソースが無かった為、ソースとレモン汁で頂きましたがフライとしての完成度が高い!サクッとジューシーな旨味が溢れでます。

そしてこれもまたふんわり。はんぺんに肉の繊維を混ぜ込んだような食感。しかしこれがクセになる旨さです。

 

ラブカ干物

続いてはラブカの干物です。

今回の調理の中では唯一、サメらしい臭いが出てしまったものです。この後に紹介しますが、意外にも生食の方は臭みが全くなく美味しく食べられました。

 

干物はサメを入手する度に試していますが、やはり単調に焼くだけの調理では臭みが微かに現れてしまいます。

しかし先ほどの唐揚げにも使ったマヨネーズと七味をつけて食べると気にならない程度。臭みと共に旨味も凝縮されています。

ラブカはサメの中でも特有のアンモニア臭が少ない種類と言うことが伺えます。

 

因みに一番美味しくなかったのはアカシュモクザメでした。

当時は腕が未熟だったりとしたので、再度入手出来る機会があれば是非リピートしてみたいです。

 

ラブカのムニエル

続いてはムニエル。こちらもサメを入手したら高確率で作ります。

今回はハーブやスパイスをまぶし、馴染ませてから小麦粉で軽く衣を付けたら、バターを溶かしたフライパンへ。

焦げ目が程よく付けば完成です。

 

ふんわり食感のラブカはムニエルに非常によく向きます。味が奥まで染み渡り、バターの甘い香りとハーブスパイスのピリリとしたアクセント。

非常に美味です!同時にイシダイもムニエルにしましたが、食感は違えど味わいはイシダイにも負けない素晴らしい白身!

ふんわりとした中に魚の旨味がしっかりと感じられます。

サメの中だと断トツで美味しいなぁ。

 

ラブカのお鍋

続いてはラブカを使った一人鍋。

汁のベースは醤油といりこ出汁。シンプルにお野菜とラブカだけを入れて仕上げに柚子皮を少々。

軽く下火を入れてから固形燃料に着火します。

 

ひと煮立ちしたら小皿に分けて頂きます!

 

サメは単純にボイルしたり焼いたりするとアンモニア臭が目立ってしまうことが多く、今回のお鍋は決して味の強い出汁ではありません。

通常であればサメの臭いが出てきてもおかしくはありませんが、ラブカは臭みが全くありません!はんぺんやお麩の様なスポンジ状のふんわりとした身が出汁の旨味を吸っており、噛むとじゅんわりと出てきます。

その為パサつかず、味も染み込んでいるので飽きずに食べ進める事が出来ます。

 

柚子の風味も楽しみながら、アクセントに七味を振りかけたり、野菜の甘味と共にラブカを楽しみました。

 

翌朝は残った汁を使い雑炊に。

ラブカの脂がほんのり表面に浮かんでいますが、こちらもサメのにおいが無く美味しく頂けます。

水揚げから調理まで4日間かかりましたが、どの料理もアンモニア臭がなかなか出ない事に驚きです。ドリップが少なく、肉の身質からしても体の中の水分量が少ないのかも知れません。

それが由来してアンモニア臭くなりにくいメカニズだとすれば、非常に利用しやすい魚だと思います。(学術的価値が高く稀少なのであまり食べれはしませんが。)

 

ラブカのお造り

最後に気になるお刺身で締めましょう!

 

ラブカ料理の中でも一際目立ったのがこちらですね(笑)

Twitter上で大晦日に広く拡散されたりしました。

まあ、衝撃的だよね。(笑)

 

しかし味わいもかなり衝撃!これがめちゃめちゃ美味いんです…!!

サメの刺身は加熱調理したものに比べアンモニア臭が少なく食べやすい調理法です。身は真っ白に白濁しており、この色は人には消化出来ない成分だったり食べ過ぎると胃もたれしたりしそうな見た目をしています。

恐る恐る一口目を口にいれると…

 

「あれ、美味しい!」

サメにしては珍しく、脂が醤油に浮かびます。そして甘味も感じられる!

本来サメの刺身はアンモニアの臭いこそ無いものの、味わいが非常に淡白です。

血合い周りが赤身に近い風味で、筋が強いのが一般的なサメの味わい。

 

しかしラブカはどうでしょう。筋はほかの魚に比べれば強いものの、味わいはほんのりとした脂の甘味が先行します。そしてボソボソとしない!

また筋が弱いこともあり、それがコリッとした程よいアクセントにも感じます。

 

過去に食べたものだとボウズギンポに近いように思えます。

↑こちらがボウズギンポ。食感はラブカに近いものの、完全に脂にステータスを振り切った魚。

 

握りにはあまり向かないかもしれませんが、変わり種としてあっても面白そうです。

 

 

ラブカの評価

今回の記事いかがだったでしょうか。

皆様にラブカの食レポをお届けできる日が来るなんて感無量です。様々な繋がりがあり、ラブカと出会う事が出来ました。

獲ってきて下さった漁師様、販売して下さった魚國様。本当にありがとうございます。

今回の記事から総合評価なるものを作成してみようと思います。魚の価格、そして価格と歩留まりから割り出したコスパ、その魚の珍しさと美味しさの4つの項目で五段階評価をしていこうと思います。

 

価格   ☆☆☆☆☆

コスパ  ・☆☆☆☆

珍しさ  ☆☆☆☆☆

味わい  ・☆☆☆☆

 

肝が食べられればコスパ最強!総合的な評価も最強クラスでした。

ちなみに骨格標本はこんな風になりました!

尾鰭の方を曲げ、天井から吊して飾っています。カッコいいでしょ?

 

今回も読んで頂きありがとうございました!🦈

 

本記事は、サテライトライターさんの記事になります。

ライター紹介

サテライトライター:夢海
未利用魚の有効活用方を探して、様々な魚種を食べて美味しく食べられる方法を研究しております。今まで400種以上の魚類を食べてきました。変わった魚の食べ方を中心に公開させて頂きます。どうぞよろしくお願いします! Twitter: @YUMEUMI27 ブログ: 夢海のまったり魚日記

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