糸引く大型のイトヒキアジ

こんにちは!夢海です🐟️

 

日本には4500種以上の魚がおり、海に行かなくとも水族館などスーパーに並ぶ食材としての魚など、身近な場所でも多くの種類を見ることが出来ます。

 

そこでよく耳にするのが、○○ダイと名の付く魚と出くわした場面で、「タイの仲間だ!」と何の疑問もなく納得している事が多いです。

しかし実際にタイの仲間(タイ科)その中でも20種ほど。

実はタイでないという確率の方が圧倒的に多いのです。

 

しかし一方で、○○アジと名の付く魚はどうでしょう。

クサアジなど、一部のものを除き殆どがアジの仲間(アジ科)です。

しかし聞こえてくるのは「これってアジの仲間なんだ!」などの、驚きや疑いの声。

 

一般的なアジの印象というと、“細い銀色の小魚“なのかも知れないので驚くのも無理はないだなんて思いますが、そうなるとタイのイメージの幅がやけに広いな!なんて思ってしまいます。

 

さて、かなり前置きが長くなってしまいましたが、今回はアジの方。

実際に「これってアジなの?」という疑問の声を聞いたことのあるイトヒキアジの紹介になります。

 

 

イトヒキアジの特徴

 

今回の個体は2.5kg。2023年の3月も10日経ったのかといった頃に入ってきた三重県産のもの。

 

実際の重さよりも見た目の方が大きく感じてしまうのはこの魚が縦に平たいためでしょうか。

 

この大きさのイトヒキアジはたまに見かける程度。基本的には300グラム程度の小型のものが多い印象。

 

稀に見かける程度のこの大きさのものですが、この年は長崎・三重より、一時まとまってやってきました。

 

(元々血の色が濃い魚ではありますが)鰓はやや茶色くくすんでいたものの、身に厚みがあり張りも悪くないため購入。

価格もキロ単価で¥1000を下回るほどで財布にも優しいです。

 

さて、それでは観察をしていきましょう。

 

まず名前の由来は…言うまでもありませんね。

 

この長く伸びた背鰭と臀鰭。

糸を引いて泳ぐということで糸引鰺。

 

小さい頃は体がひし形をしています。

※アクアマリンふくしまで撮影

 

この長い鰭を触手に見せてクラゲに擬態しているのではと言われています。

 

↑大型の個体になるほど、齧られたり欠損で鰭は短いものが多いですが、今回のイトヒキアジは体長とほぼ同じ長さ残っていました。

 

糸の色もただ黒い、ただ白いという訳ではなく、白黒のボーダー柄となっているのがまたかわいいポイント。

 

そして顔つき。

 

この大きさにもなるとかなり迫力は増し、まるでロウニンアジをも彷彿とさせます。

 

しかし歯は小さなものがザラザラと素手で触れてしまうほどには鋭くなく、小型のイワシとかならまだしも、中型の魚を捕食するにはやや心もとないです。

 

身は血合いの色が濃く、どこかボラやシイラに似ています。

他の大型のアジ科と比べてもあまりアジらしくなく、カテゴリとしては血合いの大きい白身魚に分類するのが妥当でしょう。

 

イトヒキアジの中では大型な個体ですが、脂も腹まわりにサシが入りややあるかなという程度。

2017年12月に沼津産の、今回の個体よりも大きい3.2キロのものを捌いた事がありますがやはり脂は多くない印象でした。

 

頭は半分に割り、血合いなどの汚れをしっかり落とします。

 

頭だけでもこの大きさ!

これをそのまま捨ててしまうには勿体ないので活用していきましょう。

 

 

イトヒキアジの料理

イトヒキアジの握り

まずは握りから。

背中のカミの部分を使いました。

筋はやや目立ちますが、口当たりは悪くなく、意外とすんなり溶けてくれます。

 

そして味のほうはというと。

青魚のような旨味はほぼなく、ほんのりと感じる酸味が、そよ風が鼻を抜けていくようなさわやかさを演出します。

そして味を補うようにシャリの甘味が優しく包み込むような、寿司にしてこそ光るネタといえます。

あまり味の濃いシャリとは馴染まないので、甘い薄めのシャリで握りたいです。

 

イトヒキアジのカマ煮付け

半分に割ったイトヒキアジの兜の血を洗い、軽く霜降りしてからじっくり煮込む。

 

薄っぺらいこの魚を見ると、頭部にそんな食べられる箇所があるのか。

なんて疑問に思ってしまいそうですが、この魚の真骨頂といえば頬肉となんといっても巨大な頭肉でしょう。

 

頬肉は細かな繊維でとろけるうまさ。

味もしっかり染み込んでいます。

こちらは可食部がかなり少ないためお一人様限定。

 

そして頭部で食べる箇所が最も大きいであろう頭肉。

 

この筋の密集した頭肉は硬くしまり、赤身の魚を炊いたもののような密度が高くややドライな様子。

 

そのしっかりした食感は、オン・ザ・ライスしたらお供にはちょうどよいおかずになります。

総合的に評価するのであれば、魚の旨味は濃くなくそれこそささみ肉のような“癖のないたんぱくな味“と表現すれば伝わるでしょうか。

 

イトヒキアジの刺身

イトヒキアジを卸し、腹側のカミの部分。

すなわち最も脂ののるトロを刺身にしました。

 

寿司で使った背側に比べ、筋は目立たず濁った色をします。

このコラーゲン質と脂の混じったトロは背身以上に柔らかくあっという間に溶けてしまいます。

青魚とも白身魚ともとれない、何ならほんのりと赤身の香りのようなものがススーッと香ります。

 

イトヒキアジのカマ塩焼き

半割りしたイトヒキアジの兜に塩をして焼き上げました。

 

煮付け同様に食べる箇所は頬肉に頭肉。

 

コラーゲン質な身は水分が抜けやすくパサつきやすいですが、中の方はしっとりと水分が閉じこもっており食べやすくなっています。

淡白な旨味なため、ポン酢を垂らす事でより面白みが増します。

 

イトヒキアジフライ

適当なサイズに切りつけた背中側の身に塩をし、180℃の油であげます。

 

イトヒキアジはフライがうまい!とおっしゃる方の多い通り、魚フライの中でもトップクラスに美味いです。

 

アジフライ、と名が付くと味の濃い青魚の風味を思い浮かべますが、イトヒキアジは淡白な味わい。

そのためアジフライというよりは白身フライのような美味しさを楽しめます。

 

身に水分をやや含んでいて、これが身を潤しバサバサしていないのがまたうまい。

クセのない白身で、フィッシュ&チップスやバーガーなど洋風に調理してみても好まれそうです。

 

イトヒキアジメンチ

イトヒキアジはすり身にし小麦粉・玉ねぎ・粗挽き胡椒と混ぜ合わせ、衣をつけ揚げます。

 

肉は使っていない訳ですから、肉汁じゅわ~っとした脂っこさはなく、タンパク質の目立つサッパリ系のメンチカツに。

アジと言えど青魚の臭さもなく、鶏肉で作ったかのような印象。

刻んだしその葉やおろした生姜をタネに練り込んでもうまい。

高タンパクかつ揚げ物とはいえカロリーも少なさそうで腹持ちもいいので、これは作ってみる価値あるかと思います。

 

イトヒキアジの山河焼き

メンチカツ用にすり身にしたイトヒキアジに味噌と薬味を混ぜ合わせ、ごま油で表面がキツネ色になるまで焼きます。

味噌の甘い旨味と刺激する大葉の香り。

淡白で魚の味そのものはやはりアジやイワシなどの山河焼きに比べて薄いものですが、淡白な中にスッキリ系の旨味が感じられる様子はトビウオを思い出します。

そこに紫蘇と薬味が加わり見た目以上に食べやすいです。

 

 

イトヒキアジの評価

価格   ・・・☆☆

コスパ  ・・☆☆☆

珍しさ  ・・・☆☆

味わい  ・・☆☆☆

 

価格

・大きい割に安く、使い勝手のいい魚。大小あまり関係なく価格は同じくらい。

 

コスパ

・小さな個体は肉が薄いので、姿のまま使いたい。

大型個体は肉に厚みが出てきて可食部が多いように思えるが、大きい頭や尾鰭にかけて細くなることなどから平均的。

 

珍しさ

・季節や産地で限定されるが、少なくはない。大きさもまちまちで、300グラムほどの小型のものから3キロを越す個体もたまに見かける。

 

・身に厚みのある個体でも思いの外脂がない事がある為、刺身では思ったよりも味気ないなんて事もあり得る。加熱調理に非常に向き、焼いても硬くならず身にジューシーさが残る。アジ科の中でも青魚らしさが少ないものの1つと捉えられる。

 

今回は長い糸を引くアジ、イトヒキアジを紹介しました!

 

皆さんもご存知のとおり、魚は姿形が多種多様ですが、その中でもアジの仲間(アジ科)は意外にも様々な形をしたものが多いです。

しかし共通して刺身でうまい、焼いてうまいものが多く、青魚の風味こそ種類間で異なるものの、これまで食べた十数種はどれも扱いやすいものでした。

 

まだ見ぬアジも求めこれからも色々紹介出来ればと思います。

 

ライター紹介

副管理人:夢海
未利用魚の有効活用方を探して、様々な魚種を食べて美味しく食べられる方法を研究しております。今まで550種以上の魚類を食べてきました。変わった魚の食べ方を中心に公開させて頂きます。どうぞよろしくお願いします! Twitter: @YUMEUMI27 ブログ: 夢海のまったり魚日記

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