人名の付く魚は無名で美味。オカムラギンメ
こんにちは、夢海です🐟
日本最大の水産市場である豊洲は実に面白く、津々浦々全国に点在する様々な漁港から様々な水産物が集まり、魚好きなら毎日歩いていても飽きることはありません。
そんな豊洲で、9月も最終週に差し掛かった頃、箱に「オカムラ」と書かれた見慣れない表記の魚が陳列されていました。
市場では持ち主の名前や荷出しの際に他の人に持っていかれないよう発砲の横や蓋に店名であったり、宛先の人の名前を書いて梱包します。
しかしオカムラさん宛てという訳でもなく、ギラギラとした少し不気味とも思える魚が一匹入っていました。
目次
オカムラギンメの特徴
この子こそ今回の主役、オカムラギンメという魚です。
体色は一般的な食用魚な見た目なのに、名前があまりに奇抜すぎるこの魚。
"非常に"と付くほどではありませんが珍しいもので、豊洲では今回で2度目のエンカウントになります。私自身過去に一度、八丈島産のものを頂いた事がありますが、5年以上も昔の話で味を確かめる意味でも再度入手したかったところでした。
産地は鹿児島県産。
さて買おうかと思った際に、この日は現金をあまり持っていなかった事を思い出し市場端っこにあるATMへかけて行きました。
市場が広いのかATMの設置場所がやたら遠いのか、20度を切る気候の中、朝から汗ばんでしまいました。(もうちょい近くに設置して…)
口は非常に大きく、細かい歯がブラシ状にみっちりと生え揃う。
手を引っ掛ける心配はないものの、扱いに気をつけないと擦り傷が出来てしまうので要注意です。
卸してみると身には脂がありかなりいいものの様子。
歩留まりも悪くなさそうで、使い勝手のいい魚なんじゃん。と思いたいところですが、ギンメダイの仲間は小骨が混じっておりここからそのまま柵を取れるほど容易ではありません。
ニシンのような骨の入り方をしており、血合い骨を抜く容量で3列抜かなければなりません。
幸いにもyの字をしている訳ではなさそうで突っかかりはなく抜けますが、骨に対して身が柔らかいため削りすぎには要注意です。
オカムラギンメの料理
オカムラギンメのお造り
まずは姿で造ってみました。
半身の背側を刺身、引いた皮は湯引きにしてポン酢と添え、腹は炙りにしました。
オカムラギンメの刺身
しこっとした食感で、まったりと甘い。
まったく嫌味がなく、味の濃さに対して喉を超えるとスッキリした後味で微かな余韻がある程度。
オカムラギンメの焼霜
この焼霜が実に美味く、皮目がプリンっと弾けます。
その後から引き締まった甘さの脂が追っかけて来て、余韻は静かに消えていく。単に刺身にするよりも食べやすさが増す上、皮目の食感が大変美味しく私的にはこちらの方が好きでした。
オカムラギンメの皮の湯引きポン酢
刺身用に引いた皮をボイルしてポン酢とあわせる。
皮は硬くしっかりしているため、湯引けば面白いものになるだろうと思ったが、思いの外弱くベチャッとしてしまいました。
思っていた食感にはならず、当然味がある訳でもないため評価としてはあまり高くはありません。
皮は塩コショウして素揚げ、または串に巻き焼き上げるなどの方が美味しいでしょう。
オカムラギンメの煮付け
頭は水洗いして兜割り。
煮る前に一度湯通しして鱗や汚れを落とします。
これが面白い一品となり、コイでも食べているのかと思えるほど川魚らしい香りがあり、鼻を抜ける独特な香りがあります。
おそらく海底で泥を吸い込んでは中から餌を濾し取るという食性なのでしょう。胃袋などからは見当たりませんでしたが、泥のにおいが付いてしまったと考えられます。
この特徴を予め知っていれば生姜などで下味をして、冷凍してある実山椒と炊くなど、やり方は色々とあったと思いました。
不味くはないんだけど、このままでは臭みとして捉える方も間違いなくおり、万人に受けるとは言い難いです。
身はほどよく締まり、しっとりとしてソフトな舌触り。
質としてはなかなか扱いやすい魚です。
オカムラギンメの中華風酒蒸し
煮付けに使った兜の残り半分と、余っている切り身全て使います。
やはりこちらも川魚のような香り。
蒸して味が凝縮された分、より香りも強く感じられます。
個人的には嫌なにおいではないため、うまいうまいと食べきってしまいました。
味付けはごま油とポン酢でさっぱりと。
オカムラギンメの脂がサラリサラリと流れ落ち、そこへ酸味のあるポン酢をかけて食べることで食べやすくなります。
淡白な質感で素朴な美味さがあり、特有の(?)香りが爽やかに鼻を抜けていき大変美味でした。
オカムラギンメの評価
価格 ・・☆☆☆
コスパ ・・☆☆☆
珍しさ ・・☆☆☆
味わい ・☆☆☆☆
価格
・今回のものはやや高め。産地では価値がわかっているのだろう。といった価格設定。そもそも鹿児島という産地の魚のクオリティが高いこともある。
コスパ
・歩留まりはやや良し。小骨が多いため、可食部を削らないよう骨抜きは慎重に行うとよい。
珍しさ
・あまり出会えないが流通上には現れるため、根気よく探せば出会える可能性あり。自身で捕まえに行くほどの必要はない魚だが、八丈島などでの釣果報告も度々ある。
味
・刺身はクセがなく上品なうまさ。加熱すると川魚のような風味が表れる不思議な魚。調理用途は幅広い。
今回は豊洲で見つけた謎の魚、オカムラを購入して食べてみました。
小骨が多かったり、今回の個体だけかは分かりませんが、泥のかおりがしたりと、質としては非常に扱いやすいいい魚ですが、少々クセも感じられるものでした。
結局のところ一番刺身がうまかったなぁ。
オカムラギンメ、ギンメダイ類が手に入った際は皮を炙りにしてお刺身でお試し下さい。
オカムラギンメの見られる水族館
※写真はギンメダイ
オカムラギンメの飼育展示をしている水族館は2023年11月現在ないと思われる。
ギンメダイの飼育がそもそも難しく、過去にアクアマリンふくしま、伊豆・三津シーパラダイスで出会えたのみ。
いつか出会えたらいいのに、と思っている魚のひとつ。
副管理人:夢海 未利用魚の有効活用方を探して、様々な魚種を食べて美味しく食べられる方法を研究しております。今まで550種以上の魚類を食べてきました。変わった魚の食べ方を中心に公開させて頂きます。どうぞよろしくお願いします! Twitter: @YUMEUMI27 ブログ: 夢海のまったり魚日記
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