梅雨こそきんめ、黒潮きんめ

 

こんにちは!夢海です🐟️

 

桜が散り、1日中降るような長雨がちらりほらり始まれば梅雨も目前なんだろうかと、キノコでも生えそうなじめじめ気分に浸っていると、目も覚めるような素晴らしいものが入荷していました。

 

ちょうど半年前だろうか。といった頃に一度紹介したこのお魚。

 

見れば誰しも分かる高級魚。そう、キンメダイです。

 

キンメダイの特徴

キンメダイといえば主産地は関東から近いところで千葉・神奈川・伊豆・その下に連なる伊豆諸島・そして高知や飛んで鹿児島など。

果ては沖縄の美らキンメというものも見かけるほど、黒潮の流れる漁場であれば漁獲されているほど、意外にも広い海域のものが見られる魚のひとつです。

 

当然、これだけ産地が並べば差別化をはかるべく、ほかの産地のものに負けないブランド化を目指すわけですが、今回この目を引く非常にいい個体が入っていたのは三崎黒潮キンメの箱。

これはかながわブランドに登録されている、三崎港水揚げ、四国~紀伊半島沖で漁獲されたものが名乗れるブランド品。

 

聞いたことがないという方もいらっしゃると思いますが、これは2021年に登録されたばかりの新しいブランド金目鯛になります。

このキンメダイで目を引くのはその大きさ。

なんでも250g以下の個体は再放流するという徹底ぷり。

今回の個体は1.1kg

流通するものも1kg前後のものが多いです。

 

そして高鮮度なまま0℃の厳菌海水に漬け込むため、魚体の色が褪せず赤色やオレンジ色の光沢が残っているものが殆どです。

 

そして以前のキンメダイの記事でもお話した美味しいキンメダイの見分け方をおさらい。

あくまで私、夢海流のものになるので参考程度に。

 

前回の記事はこちら↓

極上のキンメダイを食べ尽くす

 

まず、鮮度のいいものは絶対条件。

どんな魚にも当てはまる項目ですが、深海魚であるキンメダイは足が早く、内臓が溶けて腹の身が弱りやすいなどのリスクがあるため、鰓の色を観察出来るような状況であれば鰓が鮮やかな紅色をしているかを確認。

 

鰓が赤く鮮度感はクリア。

そうなるといよいよ個体の厚み、太さを見ていきます。

 

ほかの魚では目のすぐ後ろから背中にかけての、後頭部が盛り上がるものは太っていていいものの証拠です。

しかしキンメダイも例外ではないと思いますが、私は背よりも腹を見ます。

 

この胸鰭と腹鰭の付け根があるこの辺りに厚みと張りがあれば内臓が溶けておらず、脂肪が詰まっている可能性があります。

キンメダイはよっぽど大型にならない限りは背中に肉が付かず、見た目はそれほとなのに割ったら脂があった。というパターンは度々あります。

 

次に腹下の臀鰭のあたり。

 

この部位に厚みがあり、触っても担鰭骨が目立たなれけば肥ってる証拠。

 

キンメダイは正面から見ると逆三角形のようなかたちをしており、その三角形のてっぺんに当たるのがこの臀鰭。

通常でも肉の厚みがある部位を見るのも重要ですが、最も薄い部位の厚みに注目するのもまた魚選びで重要だと思います。

 

さて、今回の個体はどうなのかと言うと…

 

三枚に卸した途端にガッツポーズが出るほど。

 

全身にサシが入り、腹まわりはテカテカと脂で輝いています。

過去一、二を争う身質のよさ。

数年前、キンメダイに初めて感動した下田の地キンメと並びます。

 

通常脂がなく、(個人的に)価格ほど美味いものでないなんて思ってしまうキンメダイですが、これは間違いなく合格点です。

 

本来身の薄い魚ですが、卸した身はふっくらとし厚みがあります。

 

カマの胸鰭を動かす筋肉もまだ赤く(血液が多いため古くなりやすく茶色くなりやすい)、弱りやすい内臓が殆ど損傷していないのは、丁寧な処置の賜物と言えるでしょう。

 

刺身用の柵取り

今回は皮を引いたものと、自分の中では定番の皮を炙ったものの2種を用意しました。

 

 

 

黒潮キンメの料理

黒潮キンメの握り

まずは握りから。

そのままのものを2かん、炙りを2かん、大切りにしたネタをつけました。

 

単にわさびでつけ、これを醤油にちょんと付け頂きます。

 

非常に甘く優しい味わいで、なめらかに舌の上を転がります。

ネタ全体から押し寄せる濃厚な旨味。

噛み切る時にコリッと歯ごたえがある程度で、柔らかい身はシャリと馴染みます。

 

続いては炙り

 

皮を引いてつけたものは、味で言えば美味いもののやや単調な味わい。

それでいて味が濃いものですから、一貫でもの足りてしまいそうなものでした。

 

炙りは一度火が通った皮目が生み出す香りが印象をガラリと変えます。

皮目に塩を振り炙っているために、甘くまったりしていたキンメダイの味にまとまりが出来ます。

香ばしさと振り塩のしょっぱさが甘味を程よく抑え、食べやすい仕上がりに。

湯引きでもいいのですが、個人的に皮目の旨味を目立たせるためキンメは炙って食べたいものです。

 

キンメダイのカマ塩焼き

脂ののったカマに塩をし、これをじっくり焼き上げたもの。

煮付けにすると黒ずみほろ苦さが美味いカマですが、今回のキンメは苦味なんてものはなく、腹周りの甘い脂でコーティングされた筋肉。

黒ずんでしまう筋肉も白っぽい色をしているのは、文字通り全身に脂が混じっているからでしょうか。

 

驚くほどに濃い脂で、焼きたてのものをちびちび酒と楽しむつもりが骨になるまで一瞬でした。

 

黒潮キンメのしゃぶしゃぶ

皮付きで薄くスライスした黒潮キンメを贅沢にしゃぶしゃぶに。

 

程よく火が通ることで、まったりこってりとした甘味が現れてきます。

これを付けダレのゴマだれとポン酢の2種を交互に堪能する、キンメを半身丸ごと使ったとても贅沢な食べ方です。

 

無難にポン酢もいいですが、今回のMVPはゴマだれ。

甘味の強いキンメダイの表面の脂がほどよく抜け落ち、ここにゴマだれをぶつけることで柔らかいキンメダイの食感を強く感じられます。

 

黒潮キンメの西京焼き

ラストは西京焼きで締めくくります。

パリッと焼けた皮が特においしく、しっとりした身によく合います。

味噌のまろやかなコクと、こってりとしたキンメダイの脂、旨味。

生ではやや強く感じた脂もマイルドになり、しっとりと食べやすい味わいになりました。

 

皮は浮かび上がりやや分離するので、パリッとした食感が楽しめます。

 

 

黒潮キンメの評価

 

価格   ・☆☆☆☆

コスパ  ・・☆☆☆

珍しさ  ・・・☆☆

味わい  ☆☆☆☆☆

 

価格

・2023年春は比較的相場が安く安定していた。黒潮キンメとして評価すると、通常のものよりもブランドがつく分やや高くなるものと考えておくと吉。

 

コスパ

・コスパは平凡。身は薄く頭が大きいため、小型のものは特にあらもしっかり使いたい。

 

珍しさ

・一般的な魚。市場や高級デパートの鮮魚売り場では見ない日の方が少ない。黒潮キンメは神奈川水揚げなだけあり、関東では比較的見かける。他の市場での水産物の取り扱い状況を詳しく知らないため、地方での取り寄せは難しいものと考えておくと良いかも。

 

・大変美味。脂のない個体は正直価格ほどの旨さはないものと感じるが、梅雨のものはあまりハズれない。

 

今回は旬真っ只中、鮮度のいい濃い脂を持った黒潮キンメを食べてみました。

 

旬とは魚によってまちまち、同じ魚種でも人によってまちまち。

美味い時期の旬もあれば、たくさん獲れて安い旬もある。

 

旬という言葉の意は一概には語れないものとは承知の上で、梅雨のキンメはやっぱりうまいと思う。

 

ライター紹介

副管理人:夢海
未利用魚の有効活用方を探して、様々な魚種を食べて美味しく食べられる方法を研究しております。今まで550種以上の魚類を食べてきました。変わった魚の食べ方を中心に公開させて頂きます。どうぞよろしくお願いします! Twitter: @YUMEUMI27 ブログ: 夢海のまったり魚日記

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