テングダイにしかない良さがある

 

こんにちは、夢海です🐟

 

豊洲で最近ちょろちょろお世話になっている仲卸さんがあり、この日もまた長崎から来たであろう良きテングダイが並んでいました。

 

500グラムほどと、大きな背鰭をもつテングダイは見た目が大きく感じられるが取れる身は少ないだろうな。なんて思いながら声を掛けたが店には配送の荷造りをしているおっちゃんしか居ない。

「また後で来ておくれ。」と言われたが、何せ時間がなく、またお願いしますとだけ返し市場をあとにした。

 

しかし魚はタイムリーな出来事が多く、この日の帰りに魚好き御用達の鮮魚店、吉池さんにて見つけてしまったのだ。

 

朝、市場で見かけたものは仕立てやフィルムからおそらく長崎佐世保であろう。と片付けてしまっている。買わないものもしっかりと産地は見ておくべきです。

では眼の前のこれは…鹿児島県坊ノ岬産だ。

 

魚はタイムリーな事がよく起こり、特に今回のような異なる産地で珍しい魚が同時に揚がる。というような事は度々起こるのです。

 

この派手派手しい見た目のテングダイは何の仲間かというと、少し前に公開したクサカリツボダイと同様、カワビシャ科に属しており、焼き物で美味しいツボダイなどに近い種類になります。

隠れたうまい深海魚クサカリツボダイ

 

テングダイはあごひげが生えており、どうやらヒメジなどと同様これで索餌するらしい。

カワビシャも、葛西臨海水族園にて下顎を海底に付けて泳ぐ様子が観察できました。

 

 

テングダイの料理

テングダイのお造り

まずはその派手な見た目を活かし、姿で盛ってみました。

 

黒と黄色の毒々しい見た目とは裏腹に、身は透明感があり血合いは薄いです。

 

どこかカレイを思わせるような筋の入り方、色味。

 

味もまたマツカワのような上質なカレイを彷彿とさせるよなしっとりとした甘味がある。

 

身質は硬く、この薄さであっても噛む時にぎゅうぎゅうと身が縮まり、この密度の高い刺身からは甘味、旨味が感じられます。

そしてこの脂には臭みがなく、後味はスッキリとして食べやすさもあり、食材的には万人受けする魚に分類されます。

このしつこくない、何切れも食べれてしまう。しかし味があり、脂もある。

 

好みは人それぞれだという事を承知の上で、この特徴こそテングダイならではだと考えます。

 

テングダイは僅かながらエンガワの取れる魚で、今回もしっかり切り分けました。

 

弾力や反発してくるもちっと感ではヒラメなどに劣りますが、甘みは確かに感じられぎゅうと凝縮された旨味が浮き出てきます。

テングダイのエンガワは生が美味いので、卸した時には忘れず回収を。

 

テングダイの潮汁

あらを使い出汁をとり、身の切れ端を湯がいて潮汁にしてみました。

汁が濁らないよう、煮立たせ過ぎずに仕上げます。

 

脂が汁に浮き出て、その脂に乗っかって旨味が鼻を抜けていく。

箸でほぐれてしまうほど柔らかい身は、口の中でほろりほろり繊維がほぐれていく様子がよくわかります。

 

テングダイの塩焼き

3枚に卸した腹側の皮を引かず強めの塩をして焼き上げます。

天ぷらにでもするかと何も考えず卸してしまったもので、骨付きでないため皮の方へクルンっと縮んでしまっています。

脂も落ちてしまうため、焼くのであれば骨付きで。

 

焼き物に向く魚で、味わいは非常によし。

しとしとした程よい硬さ、ベッタリと重たくしつこくない脂の香り、焼くことで程よいマイルドさになり、塩により深まる旨味がたまりません。

幽庵や西京などの漬けはもちろん、塩をして軽く干したものを炙っても美味い。

どんな方法で焼いても、魚の旨味がしっかりと活きる味の強い魚です。

 

 

テングダイの評価

価格   ・・☆☆☆

コスパ  ・・・☆☆

珍しさ  ・・☆☆☆

味わい  ・☆☆☆☆

 

価格

・安くもなければ高くもない。味が良いため、漁獲量が安定すれば高くなる事が考えられる。

 

コスパ

・歩留まりはやや悪し。体が平たく、体の形状から頭やカマの面積がどうしても大きくなってしまう。

 

珍しさ

・それほど流通量は多くない為、見かけたら購入するべし。

 

・大変美味。生で程よい硬さがあり、味も濃い。加熱すると仕上がりは柔らかく、硬く締まらない。臭みのない上品な香りがある。

 

今回は派手な見た目のテングダイを調理して食べてみました。

久しく食べていない、そろそろ食べたいなという頃にポンと姿を現してくれるため、ついつい手が伸びてしまう、そんな魚です。

白身魚は非常に種類が豊富で、身質や味などが似て代わりになるような種は多数いるものの、テングダイは代わりになり得ない個性を持っていると感じます。

 

テングダイの見られる水族館

テングダイを展示している水族館は少なく、長期展示している葛西臨海水族園でしか見かけたことがない。

この他、テングダイと同じくカワビシャ科のカワビシャ、ツボダイも見られる。※2023/12現在

ライター紹介

副管理人:夢海 未利用魚の有効活用方を探して、様々な魚種を食べて美味しく食べられる方法を研究しております。今まで550種以上の魚類を食べてきました。変わった魚の食べ方を中心に公開させて頂きます。どうぞよろしくお願いします! Twitter: @YUMEUMI27 ブログ: 夢海のまったり魚日記

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