三陸のキツネメバルを味わう

こんにちは、夢海です🐟️

水産に携わりかれこれ6年ほど。

たまに魚屋に顔を出す只の一般家庭の消費者であった頃に比べて、この値段は安い、高い、という解像度は明らかに上がり、やっとこさ水産業者のひとりだ。となれた気がした。

そんな価格という話題で、ここ数年のうちにびっくりしたものがある。

それが今回の主役、岩手から来る釣り物の立派な真ぞいである。

見るからに美味しいのは分かるのだけれど、それでもソイはソイであって、釣りのクロソイの上物であってもせいぜいこれぐらいだろう。という個人的で勝手なイメージだけれど妥当だと思う金額がある。

この真ぞいはそれをひょいと上回るどころか、想像している額の倍と言っても過言ではないほど、なかなか手が出せない金額なのである。

いいな、いいな。なんて指を咥えてたまにやって来るこの真ぞいを眺めていると、3月の中旬に買い時だと思える価格で売られているのを発見する。

これならば買えるな!と、なんとか許容範囲に収まったものに出会えた。

これを持ち帰り計測、調理する。

キツネメバルの特徴

今回の魚は真ぞい。

真なるソイとして流通するこの真ぞいには実は2種類隠れている(とされている。)

ややグレー〜黒っぽい体色のものがキツネメバル、白っぽいものがタヌキメバルとなるが、これだ!という決め手になるようなポイントが少なく、誤同定している可能性もある。

小型の個体であればより分かりやすく、体の真中を縦に走る横帯の斑点が目立つものがタヌキ、点が密になり繋がって見えるものがキツネとなります。

↑2019年に入手した個体。

上はキツネメバル、下はタヌキメバルと同定したが、どちらもキツネメバルの可能性も考えられ、このあたりは自分の中での認識をすり合わせていこうと考えています。

今回のものはキツネメバルに落ちました。

釣り物である上に、下氷に1入れで丁寧に箱詰めされてやってくるため、上身の見栄えがよく、仲卸に並んでいると、値の割に売れる魚だ。

下身を見ると〆た跡があり、日にちはやや経っている様子なものの、身は弾力がある。

ソイ類はどれも押すと凹むような硬直をする魚で、食べるにはベストタイミングでしょう。

キツネメバルの料理

キツネメバルの刺身

まずは刺身から。

ソイ類は全身に脂がまわるなんてことはないものの、今回の個体は卸していると、縁側の部分や皮目などにしっとりと感じられるので期待値が上がります。

皮を取ってしまったからか、卸している工程で感じられた脂はどこへ行った?と言うほど、思いの外あっさりめ。

身も柔らかく、もう少しハタのような硬いものを想像していたので、思い描いていたものとやや異なる。

これは水揚げから時間が経っていた可能性もあり、一概にはなんとも言えませんが、より食感を求めるなら水揚げ直後を狙うべし。

昆布で締めたり、厚い皮を強めにあぶってみてもいいかも。

キツネメバルのちり鍋

暖かくなる前の駆け込み鍋はもっぱらちり鍋にしている。

本能ではどこかさっぱりした味付けを求めているようだ。

キツネメバルのあらと昆布で出汁を取り、そこへ豆腐、ネギ、キツネメバルの切身を入れる。

あとはコトコト煮えるのを待つだけ♪

この前日に食べたのはチダイのちり鍋で、連日白身で鍋を頂きましたが、ソイはまた違う、深みのある味わい。

肉は硬く締まらず、ホロンと口の中で繊維が解けていきます。

肝を使っていないのに、皮下の脂でスープはこてっとし、塩で味を調えただけとは思えぬ深み。

やっぱりソイは鍋なんだな!と思った瞬間でした。

キツネメバルのワイン蒸し

キツネメバルの半身は、ムニエル風ワイン蒸しにしてみました。

キツネメバルの皮は硬く縮こまりやすいので細かく切れ込みを入れ、塩とハーブなどで味付け。

バターで表面をソテーし、火が入れば白ワインをフライパンに流し込む。

あとは汁気が飛んだら取り上げる。

意外に柔らかく、ホロリホロリと崩れてしまったので盛り付けでなんとか誤魔化す。

付け合せはなんでもよし。

今回は千切りキャベツ、ポテトを添えます。

ここにトースト、コーヒーで休日の朝ごはんとなりました。

ワインで北の魚特有の臭みが軽減し、食べやすくなります。

問題は身が柔らかすぎる、繊維の節が大きくほぐれやすいこと。

ワインの量が多かったのかもしれない。

キツネメバルの評価

価格   ・☆☆☆☆

コスパ  ・・・☆☆

珍しさ  ・・・☆☆

味わい  ・☆☆☆☆

 

価格

・ピンからキリまであるが、ソイ類にしては高価なもの。大型のものほど高い傾向にある。

 

コスパ

・歩留まりはソイ類にしては悪くはない。大きい頭と、産卵期前は卵巣が膨れ、腹の肉は非常に薄くなるため、時期によって変動あり。

 

珍しさ

・一般的。産地も広いので流通量も少なくない。タヌキメバルに比べてやや多いように思う。

 

・身そのものはやや淡白。皮目に脂がのり、味もここに集まる。特に皮は厚さがあり食感のアクセントにもなる。

 

今回は個体として長いこと気になっていた三陸産の特大キツネメバルをいただきました。

ただ刺身にするにはもう少し工夫があればより美味しいんじゃないかな、とも思えます。

より新しい、硬直前のものを入手できれば試したいと思うところ。

近々、水産を巡る旅を考えているものの、行き先が決まっていない。

このキツネメバルを探すついでで三陸へ行ってみる、というのもいい考えかも知れない。

 

ライター紹介

副管理人:夢海 未利用魚の有効活用方を探して、様々な魚種を食べて美味しく食べられる方法を研究しております。今まで550種以上の魚類を食べてきました。変わった魚の食べ方を中心に公開させて頂きます。どうぞよろしくお願いします! Twitter: @YUMEUMI27 ブログ: 夢海のまったり魚日記

広告