全身ぶよぶよゼリーに覆われた深海魚シャチブリを美味しく(?)食べる

こんにちは!夢海です🐟️

 

今回は約4年前に初めて食べ、それからワーストの王者であり続けた魚と久しぶりに出会えました。

 

4年前というとブログをしていないだけでなく、自身の調理の腕前もまだまだド素人であった頃。

魚も100種類そこらしか扱った事がなく、質がどうだとか、この魚は何に向くだとかの“いろは“が全くもってわかっておらず、素材を大無しにしていたんだなと強く思うようになったのはつい最近のこと。

 

誰しも入門する時は1か100まで理解できていないのは当然ですが、中には貴重な魚たちも含まれているので出来る事なら今出会いたかった、とは思ってしまいます。

 

さて、そんな“ワースト“だとこの数年間言いふらしてきてた今回の魚、工夫次第で決してまずいものではないと感じました。

 

 

シャチブリの特徴

今回は駿河湾の水深300メートルからやってきてくれた子です。

 

この大きさのものは出会えない!と確信し、即決しました。

 

昨今の深海魚ブームの中で、この特徴的なシャチブリという魚は少なからず認知されており、知名度は低くないものだと思います。

 

まずは気になるそのネーミング。

これは体の形状に由来するものらしく、丸い頭と細い体の見た目が鯱(シャチ)に似ている事から鯱(シャチ)[ぶってる→シャチブリ(鯱振) と、なったそうなんです。

 

しかしここに登場するシャチとは、顔が虎、体が魚の姿をした空想上の生き物「鯱」に似ているから、だそうです。

“しゃちほこ“も空想上の鯱がモデルですね。

 

頭部は丸くぶよぶよとしているため、ゼリーの鼻の意味で英語では「Jellynose fish」と呼ばれているそうです。

 

口は意外と大きく開き、海底の泥を吸い込み餌を探します。

 

胸鰭は柔らかく黒い鰭膜に覆われています。

この魚は棘条を持たず、全身の鰭の骨は柔らかくなっています。

 

鰓は赤く非常に鮮度が良さそうです。

 

今回のシャチブリは98cm TL ・1453gと、

以前出会ったことのある60cmほどの個体に比べ、かなり大きいです。

 

大きい分、身も分厚いため色々な調理で楽しめそうです。

 

このシャチブリがまずいという理由はこの皮下にたっぷり詰まっている“ぬめぬめ“。

 

↑鼻先の皮膚を少し切ってみました。

 

この無味無臭とはいえ、文字通りつかみ所のないこのヌメリが厄介なポイントと言えるでしょう。

 

本当に鼻水のような成分で、調理をする上でこれが厄介になってきます。

 

頭を落とし内蔵を取り出すと、立派な肝も出てきました。

 

身の方は表面のぬめりをよく落とし、ぶつ切りにして調理に使います。

 

↑シャチブリの断面図

 

今回初めて断面図を観察でき、前回美味しくなかったのはこういうことか!と納得しました。

真ん中の白い部分が筋肉、その周りを透明なぬめりの層が覆い、分厚い皮が包んでいます。

つまり、皮を使わない調理であれば

 

そして身の一部はお刺身で。

前回食べたときは水分が出てきてとても刺身という感じではなかったので、今回は昆布で締めて水分を極力抜くのを意識してみました。

ぬめりをしっかり落とし、こまめにペーパーを交換すること2日間。

表面を触ってもぬめりを全く感じない程になれば切りつけて盛るだけです!

 

 

シャチブリの料理

シャチブリの味噌汁

尾に近い細い部位をぶつ切りにし、霜降りをしてぬめりを落とします。

 

ぶつ切りにしたシャチブリを新玉ねぎとひと煮立ちさせ味噌を溶かします。

 

これがなかなかに美味く、ツルンと肌に優しそうな質感の皮ののどごし。そして筋肉に詰まった旨味です。

軽い身に反比例する舌にドンッと乗っかる旨味。

それこそタラのような、静岡で獲れた魚というよりは北の海出身な魚の味わい。

見た目と過去の記憶から味のないものだなんて油断していたのもあるかも知れません。

 

シャチブリ鍋

あの巨大な肝は鍋にぶっこんでしまおう!ということで、程よく暖かくなり鍋かぁ~と、感じる季節に敢えて鍋を引っ張り出し仕立てました。

 

一度霜降りをし、ぬめりを落としたものをダシと一緒に炊きます。

 

野菜は春菊を入れてみました。

巨大な肝の脂が汁に溶け出し、汁の表面がつやつやしています。

 

肝は濃厚で美味いものの、かなり濃い味わいの為食べ過ぎに気をつけるべき魚かも知れません。

 

一方で身は味噌汁同様に、皮はつるんっとのど越しがよく、その下に眠る身はふわふわな柔らかい魚といった位には繊維を感じ、想像以上には食感を感じました。

 

シャチブリの昆布〆握り

斜めにそぎ切りに。

味を堪能すべく、大ぶりに切りつけてみました。

 

身の中の方はまだぬめっと感を感じましたが、許容範囲。

だいぶ水分を追い出せたと思います。

こちらを純粋に醤油で頂きます。

 

これが…意外や意外にうまいんです。

多分人類史上まだ数人しか味わったことのないであろう一品ですが、身の質は悪くなく、ねっとりとイカのような質感。

魚のうま味というものはほんのりとかすかに感じる程度で昆布の味が勝ってはしまうものの、この質はほかの魚では味わえない面白みのある一貫では内でしょうか。

 

シャチブリの評価

価格   ・・・☆☆

コスパ  ・・・☆☆

珍しさ  ・・☆☆☆

味わい  ・・☆☆☆

 

価格

・基本的には売られない。あっても格安である事が多い。

 

コスパ

・頭が大きく身は細いため可食部は少なめ。今回標本用とした為登場しなかったが、頭なども活用したい。加熱調理であればぶつ切りにして炊くとよい。

 

珍しさ

・産地を絞り探せばなんとか見つかる魚。入手した2回とも春頃、駿河湾と相模湾で揚がったため、この時期に掛かりやすいのかもしれない。

 

・無難に美味い。小振りの個体であった、まだまだこの魚の特性を知らなかったといった要点で、これまでは味がなくネバネバして不味いものだと思い込んでいたが、身にうま味がある。

 

今回は全身ぬめぬめだらけの深海魚、シャチブリをリベンジしてみました。

汁物は普通に美味く、数年前のイメージをすっかり塗り替えられてしまいました。

過去に食べたものも、時を経て食べると美味しく感じる事もあれば、前回よりも魚の質・特徴を見て適した調理を出来たのかなとも思います。

 

ライター紹介

副管理人:夢海
未利用魚の有効活用方を探して、様々な魚種を食べて美味しく食べられる方法を研究しております。今まで550種以上の魚類を食べてきました。変わった魚の食べ方を中心に公開させて頂きます。どうぞよろしくお願いします! Twitter: @YUMEUMI27 ブログ: 夢海のまったり魚日記

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