時代に合った好まれるであろう魚「スミクイウオ」

 

こんにちは、夢海です🐟️

 

今回は熱海からやって来てくれたお魚の紹介。

6月下旬、もう梅雨に入ったのかまだなのかよく分からないが、どんよりとした天気が続いていたある日のこと。

気圧の変化のせいか海も時化ており市場には魚が少ない状態が続いていました。

 

近頃市場を歩いていても同じ面々が並び、しかも相場もやや高い。

イマイチ今晩はこれにしようというものに出会えておらず、少し前に広島へ出かけた直後の勢いは失っていました。

 

そもそも海が時化てしまっているのだから仕方がないのですが、何かしら食べたいと考えていました。

 

昨年のちょうどこれくらいの時期に頼んだ熱海の鮮魚セットの存在を思い出し、月曜の朝だけどギリギリ発注間に合うか。と思い切って購入に踏み切りました。

しかもこれが優秀で、毎週火曜日が発送日となっており、関東圏では翌日の水曜日に届くというものなので、いつ来るのだろう。という不安もなければ、市場人の私にとっては休市の水曜日に新鮮な魚が届くという画期的なものです。

しかも時化で届けられない。という事もこれまでなかったので、安心して頼めます。※さすがに限度はあると思いますが。

 

熱海というと相模湾も西端に位置し、近くには小田原という素晴らしい港町がある言わずとしれた温泉街になります。

 

相模湾は魚駆け出しという頃にお世話になったフィールドです。

江ノ島周辺の磯を歩き回ったり、片瀬漁港まで早い時は始発の電車に乗り込み、遥々遠くから通ったりと、10代の頃はちょろちょろ訪れていました。

そんな懐かしきフィールドであるため馴染みのワカシやエソなんかを見ると、給料をはたいて買った魚検のことや、ネットを駆使し魚屋を探しては訪れてみたことなど、色々な記憶が巡ります。

 

熱海もまた、小田原の魚屋さんへ魚を買い求めに出た時にちょろっと降りて駅周りを散策したりもしました。

 

 

スミクイウオの特徴

今回の魚はスミクイウオ。

見た目はゾンビのようです。

この変わり果てた姿なのは、網などに擦れて鱗や皮が落ちてしまったため。

肌が露出した姿をしていますが、実際は普通の魚同様に鱗があり皮がある魚です。

 

今回のBOXには5個体入っていました。

 

大小あり、この中から大振りのものは刺身などに、小型のものは丸ごと使っていきます。

 

このスミクイウオは近年、豊洲でも目にする機会が増えてきたように思えます。

というのもアカムツと同じホタルジャコ科に属し、小ぶりではあるものの味は良くまとまって獲れるため、近年の傾向からするといつしか人気が出てもおかしくはないと感じていました。

鮮度がいいと刺身にもなり、産地も千葉や茨城など、東京から近いのも選ばれるポイントでしょう。

 

 

スミクイウオの料理

スミクイウオの握り

まずは握りから。

他の熱海産のものと合わせてつけました。

スミクイウオは左から2番目。

 

塩をして炙りにし、レモンをかけて完成。

さすがはホタルジャコ科というだけあり、舌へ触れた瞬間に芳醇な香りの脂が広がり、甘味が伝わります。

 

炙ることで脂が多少軽くなり、その分コクを楽しむ余裕ができます。

 

スミクイウオの天ぷら

1尾は腹開きにし、天ぷらに。

中骨は硬く、身は柔らかいので手で開くことも出来そうです。

 

衣によって閉じ込められた脂が溢れてきます。

しかも品がある脂でしつこさを感じません。

衣は重たすぎないもので厚めに覆うと美味しく仕上がります。

 

サイズ良し、味よし。天だねによく向く魚です。

豊洲に並んでいるものを買っていく人はどんな用途に使っているのだろう。天だねかな?と気になってどこか支えています。

 

スミクイウオの一夜干し

この手の小ぶりの魚は干しても美味い。というより干して美味いが正しいかもしれません。

どこかハダカイワシ類と用途が似ているように思えます。

焼いていると脂が身の内側から、じゅうじゅうと音を立てながら泡を吹き出しています。

これが表面で焦げて口に入れた瞬間に香ばしさが広がり、一気に重みあるスミクイウオの味が舌へズドンと落ちてきます。

 

塩で引き締められた身はキュッとまとまり、焼いたことで脂も落ちて風味豊かで実に美味です。

 

スミクイウオフライ

熱海産のもので、スミクイウオのほかタカベやマルアジなどとまとめてフライにしました。

 

スミクイウオは天ぷらと同様に腹開きにしておき、これをカラッと揚げます。

天ぷらとはまた違った面白さがあり、こちらは柔らかい身と相反するようにボリュームが感じられます。

繊細な味わいを楽しむものから、食として美味さを、ボリュームを味わうという印象へと変わります。

 

 

スミクイウオの評価

価格   ・・☆☆☆

コスパ  ・・☆☆☆

珍しさ  ・・☆☆☆

味わい  ・☆☆☆☆

 

価格

・安い上に水揚げも安定的でない。小型であり見た目も擦れてしまっていたりと、それほど高くはないものの、味の良さから今後値が上がってもおかしくはないと考えている。

 

コスパ

・小型魚であるためコスパは悪くない。丸ごと1尾で調理が出来る。

 

珍しさ

・流通上では珍しいものの、こういった産地の定置網などの入合では比較的見る機会はあると思われる。探すべき場所を見れば見つかるというもの。

 

・非常に美味。見た目が不気味であるからと一蹴してはいけない。鮮度がいいと刺身で、小ぶりなら干すか揚げるか等、小さい分小さいなりの美味い食べ方で試すとよい。

 

今回はスミクイウオを調理して頂きました。

食に関する歴史については全くの無知なので、デタラメを言っていると聞き流してほしい話なのですが、恐らくスミクイウオのような脂のある魚はその昔好まれず、更にはわざわざこんな小さいものまでは食べていなかった時代もあったことでしょう。

 

そんな魚たちが表に出てきていると言うのは、それだけ資源量に余裕がないように肌で感じられます。

大衆的なものだけでなく、季節の移ろいを楽しみ(魚に限らずだが)多彩なものを頂き、各々の文化を守りつつ後生へと受け継げていければいいよね。なんて、小さいスミクイウオを食べながら考えました。

 

スミクイウオは見かける機会や場所は少ないであろうものの、美味しい魚なので見かけた際にはぜひ食べてみて頂きたいものです。

 

ライター紹介

副管理人:夢海 未利用魚の有効活用方を探して、様々な魚種を食べて美味しく食べられる方法を研究しております。今まで550種以上の魚類を食べてきました。変わった魚の食べ方を中心に公開させて頂きます。どうぞよろしくお願いします! Twitter: @YUMEUMI27 ブログ: 夢海のまったり魚日記

広告