2キロの大型シマガツオは新発見のうまさ

こんにちは、夢海です🐟

 

12月になり、寒ブリはまだかまだかなんて声が聞こえ始めた頃。

冬のこってりしたものが食べたいと探しまわっていたある日、岩手からまとまって面白いものが入ってきました。

下氷仕立てで、比較的魚体に傷が少ない定置網もの。

2入〜4入くらいでデブロクがあるものの、目方を見れば4キロほどと、大きいものを選るとこれまで入手したことのない大きさのシマガツオが出てきます。

 

そんな大きなシマガツオが手に入ったので、美味しく調理していきたいと思います。

 

 

シマガツオの特徴

今回のシマガツオは自身が過去に扱った中でも断トツで大きな個体。

1951グラム、全長は51.4cmと、これまで扱った個体はほぼ1キロ前後の個体ばかりであったのに比べるとほぼ倍の大きさ。

 

このシマガツオもいつしかブログで紹介したいなんて考えていましたが、比較的手に入れやすい魚屋が近場でなく、 鮮魚を持ち歩くつもりが無い日に限り、たまたま立寄ると並んでいて何度も見送ってきました。

 

おでこは丸く、大型の個体ほど膨れてきます。

 

大きく光を反射する目。

この魚が不気味に思われがちなのは、この顔つきによるものだろうか。

細かく鋭い歯が並びます。

 

個人的にシマガツオの好きなポイントが長い胸鰭の先端の白い部分。

透明な鰭の魚で、部分的に模様のある魚がとても好きなのです。

 

背鰭は黒く、如何にも深海魚な見た目をしています。

 

腹鰭も同様の形をしている筈…なのですが、この個体は他の生物に噛じられたのか、欠損し凹みが見られます。

 

胸鰭の付け根は銅色をしており、鱗が逆立っています。

 

産地は岩手県産。

まとまって市場に入ってきたため、定置網に大量に掛かったのでしょう。

鰓は赤く鮮度よし。身がやや緩いものも混じりましたが、基本的には張りがありいいものばかりでした。

おまけにサイズ感も大きいため、お客さんにも好評の様子です。

 

それでは捌いていきます。

カマを身に残し、頭だけを落としセミドレスにします。

 

シマガツオは頭肉がたんまりと詰まっているため、これを棄ててしまうのはもったいないため、このまま焼いてやろうか。なんて考えてましたが、魚体が大きいためコンロに入らず断念。

 

頭肉だけを剥ぎ取り、口の骨格を標本にすることにしました。

 

つやっとした表面の頭肉。

今回は加熱に使いますが、いつかお刺身でも食べてみたい。

 

それでは身の方の仕込みを。

シマガツオは全身鎧のようなビッチリと並んだ鱗で覆われているため、基本は皮を引いて使う魚になります。

 

3枚におろし、体高があるため背と腹に切り分けてから皮を引きます。

 

皮を引くと銀色の体色とは正反対の白い身が顔をのぞかせます。

背側は特に筋が目立ちますが、身が柔らかく刺身にしても気になりません。

 

今回の個体で驚いたのがこの腹側。

シマガツオは非常にあっさりで、身は柔らかいものの脂は殆ど感じられない魚とばかり思っていました。

今回のこの個体でそんな印象を覆されるとも知らずに…。

 

 

シマガツオの料理

シマガツオのお造り

まずはお造りにしてみました。

身は白く、皮は黒銀色で対照的な色合いなので、ハッキリとしたコントラストできれいに見えます。

 

水分が多くなかなか立たせるのが難しい身なので平たく造ってみました。

血合いがほのかに残り、淡いコントラストが非常にいい見た目を演出します。

 

淡白ながら脂でほんのりと甘いものの、見た目ほど重たくない味わい。

まったりとした中でアッサリ。ではなく、あっさりした中に甘みがある。という印象で、やはりベースは味が薄い魚であるという事を改めて認識しました。

 

しかしそのためか、ついつい伸びる手が止まらず、レモンサワーも止まらず。

 

レモンサワーなどで洗った口へ放るとまたさらにこの魚の旨味がわかり、それでもサッパリしていてまたつまんでしまう。

そんなこんなで1時間あまりで食べきってしまいました。

 

シマガツオの握り

背と腹をそれぞれ3貫ずつ握りました。

 

背の身はトロッとしているものの、シマガツオそのものはやはり旨味に欠けてしまいます。

魚の香りがより際立つよう、シャリをひと肌よりほんのり温かくし握りました。

するとビンチョウのような微かな酸味、ほんのりとアクセントのような鉄の風味がする苦味、脂のしとっとした甘みと、非常にバランスの良い味わい。そして柔らかくシャリとの馴染みがよい質感で、シャリと馴染み消えていきます。

 

一方で腹側。柵取りすると腹の幅がやたらと大きくなる為、素直に大切りのネタとしました。

背と異なりサシが入り、握る際にはペタッと肌にくっつく感触もありました。

シャリと合わせることで甘みも際立ち、背側に比べて脂がより強く感じられますが、後味は口に残らずスッキリとしている為、しつこさがありません。

身が柔らかく酸味が微かに感じられる事から、ビントロとまでは行かないものの赤身魚に近い印象を受けます。

 

シマガツオのカマ塩焼き

カマを開いて強めに塩をして15分ほど放置。

汗をかいてきたら水分を拭き取り、塩をさらに少々振り掛けて焼き上げます。

 

この赤い筋肉は胸鰭をパタつかせて羽ばたくように泳ぐ魚に見られる特徴です。

他の一般的な食用魚であればキンメダイなどで見られます。

 

脂のない個体であったらパサつくであろうところ、今回の個体は脂で表面がテカリと輝く。

カマの周りの肉は、ほぼ赤い筋肉が占めており焼けてほろっとビターな旨味になります。

 

ここへすだちを搾りリセットし、またひとくち。

するとコクがより増して感じられ、レモンサワーで喉を潤せながらまたうまいうまいとつつく。

可食部が少ない訳ではないのないものの、ハラヘリ!なところに出されてしまえばあっという間に骨のみになってしまいました。

 

シマガツオフライ(頭肉・身)

シマガツオは身が非常に淡白かつほどよく水分を含むため、揚げ物によく合います。

今回は頭肉と身を食べ比べてみることにしました。

 

結論としては頭肉が圧倒的にうまい。

 

尾鰭に近い身の部分は、水分が飛びややパサッと。

これが決して悪いわけではなく、臭みも薄いためササミ肉と遜色がほぼない印象を受けました。

言ってしまえば一般的な美味い白身フライ。美味しいものの面白みに欠けるというところでしょうか。

 

一方で頭肉。これが異常なほどに美味いと感じました。

筋肉の繊維はあるものの、それぞれの境目がほぼ感じられずソフトな口当たり。

 

サクサクの衣にホロホロと崩れる身の対照的な食感が面白く、軽さと上品さが感じられるフライでした。

 

 

シマガツオの評価

 

価格   ・・・☆☆

コスパ  ・・☆☆☆

珍しさ  ・・・☆☆

味わい  ・☆☆☆☆

 

価格

・不気味な見た目でまとまって獲れる事も少ないため比較的安い魚。

 

コスパ

・歩留まりは普通。頭肉が取れるため可食部は多いが、薄い個体はそもそもの肉が少ない。

 

珍しさ

・探せば手に入るが、基本は産地周辺でのみの流通。シマガツオ科の入手はタイミング次第。

 

・淡白な味わいの中に旨味があり身は柔らかく、米との相性がよい。加熱しても硬く締まらず水分も飛ばないためフライや漬け焼きなどとの相性が良い。

 

シマガツオの見られる水族館

 

展示は珍しい。

私が見たのはアクアマリンふくしまで一度だけ。

2023年は八景島シーパラダイスでも展示されているという情報もありました。

↑2018年に撮影※2024/01現在展示情報なし

 

ライター紹介

副管理人:夢海 未利用魚の有効活用方を探して、様々な魚種を食べて美味しく食べられる方法を研究しております。今まで550種以上の魚類を食べてきました。変わった魚の食べ方を中心に公開させて頂きます。どうぞよろしくお願いします! Twitter: @YUMEUMI27 ブログ: 夢海のまったり魚日記

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