ニギスちゃん、もっと関東に来ておくれ

こんにちは、夢海です🐟️

 

今回は山陰からやってきたもの。

珍しく、豊洲に島根からニギスが来ていた。

 

ニギスというと主に日本海側の底曳き網などで漁獲され、足の早さから一般に関東では食さない。

関東の人なら知っている方は多いだろう、新潟に本店を置く魚屋で並んでいるのを見たことがある程度。

市場で見たことがなかったという点と、間違いなく美味しい魚ということからこの日の晩のおかずに買っていくことにしました。

 

 

ニギスの特徴

改めて、今回の魚はニギス。

特段珍しいという魚ではないものの、関東では一般的でなく、当然提供されている飲食店も少ない。

形がキス(シロギス)に似て"似鱚"と書くけれど、キスではない。

 

どころか、ニギス目というグループを形成し、この中でも一般的に食用となるのはニギスとカゴシマニギスのみ。

ニギス目にはセキトリイワシ科なども属するものの、普通に生活する人にとっては縁のないような生き物ばかりだ。

本種含め深海に生息する事や、弱り易いなどの点で生体の維持が難しく、水族館などでも見られる機会は殆どない。

 

博物館などで標本があるかどうか、と言ったくらいで生体に出会うことも難しい。

さて、ニギスに話を戻す。

今回のものは、前日底曳き網で揚がったというもので、時々身が緩い個体も混じるものの、鮮度感は抜群。

 

↑ニギスはエメラルドグリーンからパープルの光沢が表面の皮に見られる。

鱗は殆ど剥がれてしまい、元の姿が想像しにくい魚ではあるが、稀に捕食された個体が口から出てくる事もある。

 

↑同じく島根県で揚がったカガミダイの口内にいたもの。

 

さて、調理は簡単。

厄介なのは身が柔らかすぎることと、それでい骨は棘のように鋭いので、サササッと手開きでテンポよくは出来ない。

 

可能であれば包丁を入れて中骨を取る。

手開きにする場合は骨が刺さらないよう、頭の方から開いていく。

そしてもう一つ、鮮度の良いものは刺身になる。

 

内蔵と腹鰭を同時に切り落とす。

背から包丁を入れて3枚に卸す。

 

 

ニギスの料理

ニギスの握り

生姜はあっても無くても。過去に沼津で食べたものには乗っていたので真似してみた。

 

味は非常に繊細。爽やかな香りが鼻を抜け、ほんの少し触れただけでもとろけてしまいそうな程柔らかい。余韻を楽しむ前にふわっと消える様は淡雪のよう。

 

生姜はあってもなくても。

素の香りを楽しむなら要らないし、あると味が引き締まる。

これが無きゃ!というものではないが、箸休めの一貫には御誂え向き。

 

本当に鮮度が良く、身が柔らか過ぎなければ昆布締めなど変化球を投げられそうである。

 

ニギスフライ

ニギスは開いておき、軽く振り塩をしてからフライにする。

 

生のニギスを前に、「やっぱ焼きかね。」と会話は何度か聞いた。

しかしそれと同等以上に、油との相性がいい魚である。

日常的に食べる惣菜として嬉しいもの。

 

子供の頃に、「晩ご飯はニギスのフライよ。」などと言われてしまえばゲーム機をほっぽり出して食卓へ直行した筈だ。

キャペリンのフライ同様、子持ちの個体を丸ごと揚げても良い。

 

ニギスの丸干し

購入したニギスのうち、雌を見分ける。

 

外見から、なんとなくふっくらしてるから子持ちの雌かな?と割ってみても案外白子が出てくる。なんて事も少なくはなかった為、荒業で腹を少しだけ破り、子持ちの個体を選った。

 

塩をして、腹は抜かずにそのまま乾かし、翌日の晩にこれを焼いた。

ここからが大変。一口食べると美味いこと美味いこと。

 

一本むしゃり、と食べたら続けてむしゃり。と、米も酒も口に含める間もなく腹に収まってしまう。

2尾では圧倒的に足りない美味しさであった。

 

肝も多少あり、これが濃い風味を口いっぱいに広げてくれる。

苦玉は目立たなく、内蔵が苦い!ともあまりならなかった。

 

卵はキャペリン(カラフトシシャモ)のように固形としてあまりまとまって固まらず、ホロホロと箸先で崩れるので、身と一緒に食べる。

 

ワタが美味しい、というよりワタが身をより美味しくさせるソースの役割を担っているようだ。

塩の入れ加減もあるだろうが、絶妙な塩味でこの後に食べた白米がべらぼうに美味しく感じた。

 

ニギス天

少し個性に欠けるが、個人的にニギスの真打ちは天ぷらだと勝手に思っている。

生の状態の水っぽさを忘れるほど、身はしっかり


それでいて油はねもし難いので、扱う上でも優秀であると言える。

サクッとした衣の下には、ふわふわのニギスが待ち構えている。

白身らしい旨味があり、キスに比べて肉の繊維が目立たず、より柔らかく感じられる。

 

サイズ感もキス天にしては大きい。シロギスならばきっと1尾あたり倍以上はするのだろうと考えてしまう。

天つゆよりも塩で食べることでこれが際立つ。

 

後日、あまりに美味しかったので天ぷら用に追加で買ってきた。

開いて真空冷凍し、腹が減れば揚げるだけ♪なのである。

仕事って、先に片しておくと、後々有り難いと思う。

 

ニギスの評価

価格   ・・・☆☆

コスパ  ・・・☆☆

珍しさ  ・・・☆☆

味わい  ・・☆☆☆

 

価格

・足の早さもあって安い。惣菜的なものとして取り入れられる。

コスパ

・頭が小さく、歩留まりは悪くない。小型なのでセミドレスか開きで使う。刺身以外の用途で半身にはあまりしない。

珍しさ

・日本海では一般的。沼津などでもトロールで漁獲されたものを寿司や天ぷらで提供する。関東では殆ど稀。足が早いので丸干しなどの加工品は見かけるが、生のものは市場でも目にする機会は少ない。新潟発祥の鮮魚店でたまに見かけるため、探すのであれば産地との繋がりがある店舗を見てみると早い。

・非常に美味。揚げネタとして特に優秀。クセがなく個性は薄いが万人に受ける味わい。鮮度が良いと刺身もいい。色々な使い方が出来る魚だ。

 

今回は鮮度のいいニギスを久しぶりに堪能できました。

なかなか関東では見つからないのがちょっぴり悲しいところ。

もっと来ておくれ。と、食べたことある人なら多数の方は思うはず。

もっと知名度というか、利用される場面が増えれば良いのに。と言ったところで今回はここまで。

 

ライター紹介

副管理人:夢海 未利用魚の有効活用方を探して、様々な魚種を食べて美味しく食べられる方法を研究しております。今まで550種以上の魚類を食べてきました。変わった魚の食べ方を中心に公開させて頂きます。どうぞよろしくお願いします! Twitter: @YUMEUMI27 ブログ: 夢海のまったり魚日記

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