バイヤーに持たされたヒブダイが大当たり

こんにちは、夢海です🐟️

 

魚を買い込みすぎてしまったある日のこと。

知り合いのバイヤーから良いものが入ったから買っていかない?と声がかかり、冷蔵庫に鮮魚が溢れてはいるものの、これは見過ごせない。そんな素晴らしい魚が鹿児島県甑島からやってきました。

 

ヒブダイの特徴

今回の魚はヒブダイというブダイの仲間。

 

ブダイの仲間は過去に同じヒブダイを紹介したか初めてかといった感じで、意外にも目にする機会が少ない。

そして入荷があれど、大体のブダイは内臓が溶けて緩くなってしまっていたりと、状態がそれほどよろしくない事も多々あります。

 

今回の個体は見せて頂いたところ、網で首元の鱗が剥がれてはいるものの、内臓はしっかりしており、身に張りがあります。

これでキロ800円ならと、「しかたないな~」と言いながらも、嬉しさから顔はしっかりニヤついていました。

 

 

ブダイ及びベラの仲間は多くの種類が生まれた時は雌、成長して雄になる生態をしており、見た目もガラリと変わります。

今回のヒブダイは黄色い体をベースに、水色の模様が綺麗な雌ですが、成長すると赤い頬に濃い青色や緑色といった、ジャングルにいそうな鳥を思い浮かべる色合いへと変化します。

 

↑例えば背鰭の水色のラインと、これに挟まれた黄色い帯は青色、オレンジ色へと変化します。

 

尾鰭は青い上葉、下葉がそれぞれ伸びます。

ブダイの仲間もまた見分けが難しく、並べてみればみな違うことはよく分かりますが、まだ未熟なわたしでは単体だと「誰だっけ。」となります。

 

そしてブダイというとこのオウムのくちばしのような歯が特徴。

この事から英名ではパロットフィッシュと呼ばれる事があります。

 

ブダイの仲間はこのくちばしのような歯だけでなく、喉元に咽頭歯(いんとうし)と呼ばれる細かくすり潰す為の、板のような平たい歯を持ちます。

本個体の胃の内容物からは、細かくすり潰された甲殻類の殻が出てきました。

 

この咽頭歯は他にもベラやフエフキダイといった種類も持っていたりと、特別珍しいものではありませんが、ブダイほど発達している種類は少ないです。

 

腹には巨大な肝が入っていました。

本種から毒の報告は特にありませんが、食用での流通禁止のブダイ、アオブダイのパリトキシンはこの肝に蓄積される事が多いこと、1kgを超えるやや大型の個体であることなとから、今回は喫食を避けました。

 

3枚におろすと身はふっくら。

磯臭さも感じられず、鮮度がよく、上質なものです。

雄節をひと柵、皮付きのまま湯引きにしました。

 

過去に沖縄を何度か訪れた際も、いらぶちゃーの湯引きはよく食べたものです。

 

 

ヒブダイの料理

ヒブダイのかぶと煮

ヒブダイの頭を半割にし、熱湯をかけ霜降りに。

これを冷水で冷やしながら鱗や血合いを洗い流し、濃いめの醤油ベースの煮汁で煮込みます。

 

細い繊維の頬肉と、やや醤油辛い味付きの柔らかい皮をつるっと食べるのがまたうまい。

 

ブダイの頭部は肉付きがそれほど良くなく可食部が多くない為、煮付けにするならダシにする方が向いていたと少しばかり後悔。

あまりダシが取れるとも考えられませんが。

 

ヒブダイのカルパッチョ

いわゆるいらぶちゃーのカルパッチョ。

ヒブダイに限らず、ブダイの湯引きを使ったカルパッチョは何年か前に沖縄で食べたと記憶します。

 

しっとりもっちりとした甘みのある身はフルーティーな香りとよく合い、粗挽き胡椒がピリリとはじけ大変美味。

皮はそれほど硬くなく、ぷりっと軽い歯ごたえがある程度。

そしてブダイだとどこか磯くさそうなイメージをしてしまいますが、ヒブダイはクセが全くなく純粋に甘味があり、皮目に旨味がある。印象以上に品のあるうまい魚です。

 

皮を引いてしまうと面白みに欠けるので湯引きで試して下さい。

 

ヒブダイフライ

3枚に卸し、皮を引いたヒブダイを180度の油でじっくり揚げました。

 

身に含まれている水分が抜けると共に身が収縮し、揚げる前に比べてやや縮んだ分、ふっくらと厚みが出てきています。

こちらもやはり臭み云々の話どころではないくらいに美味。

 

ヒブダイの握り

カルパッチョ用に湯引きにしたヒブダイを大きめに切りつけ、わさびでつけます。

お好みで柑橘類、特にすだちと相性がよく、またもみじ卸などの薬味を使っても合います。

 

ヒブダイの酒蒸し

ヒブダイの尾に近い部位を骨付きで切り身にし、これを昆布・野菜と蒸していきます。

 

ブダイを蒸し物にして食べたのは初めてですが、水分の多いブダイは蒸す事でふわっと仕上がりました。

表面はやや硬く締まるため、食べやすい様切れ込みを入れればより良くなります。

味を吸いやすく、酒の豊かな香りと昆布の旨味も吸い込み、大変風味豊かです。

 

酒のあまい香りと出汁の香りに箸が止まることはなく、あっという間に食べきってしまいました。

 

ヒブダイの西京焼き

皮付きのまま切り身にしたヒブダイを西京味噌に漬け込み2日、ペーパーでふき取り、焦げないよう気にしつつ焼き上げます。

 

ヒブダイ及びブダイ類で西京焼きを作るのは初めて。

しかしこれがなっかなかに相性がよく、元々しっとりとした質で、焼くとふっくらするヒブダイに旨味を追い足した様子。

やや淡白ではあるものの、魚らしい旨味が感じられます。

 

 

ヒブダイの評価

 

価格   ・・☆☆☆

コスパ  ・・☆☆☆

珍しさ  ・・☆☆☆

味わい  ・・☆☆☆

 

・価格

それほど高い魚でない。配送コストがかかるため、ほかの魚と一緒に流してくる場合が多いが、他の魚種よりも安い事が多い。

 

コスパ

・コスパは普通。見た目よりは歩留まりがいい。身に厚みがあり、可食部は多い。

 

珍しさ

・南方系の魚だが、現地では普通種。関東へは鹿児島や長崎から流通してくる他、まれに高知などの産地も見受けられる。

 

味わい

・平凡といえば平凡だが、無難な美味さ。淡白すぎず、食感に甘味があり美味い。また、加熱しても硬く締まらないため大変美味しい。

 

今回は大型のヒブダイを食べてみました。

冒頭でも紹介したヒブダイの雄は、6年ほど前に捌いた個体で、当時は腕が全くなかったド素人でした。

その後もヒブダイは度々入手するも、小型の個体ばかりと出会い、1キロを上回るような個体はあまり食べて来ませんでした。

それがちょうど雄相と雌相の間のまだ食べたことのないサイズのものが手に入り、味わい深いのを確認できました。

 

教えてくださったバイヤーさんに感謝。

いつ声がかかっても良いよう冷蔵庫の魚は最低限にしておこう。

 

ライター紹介

副管理人:夢海
未利用魚の有効活用方を探して、様々な魚種を食べて美味しく食べられる方法を研究しております。今まで550種以上の魚類を食べてきました。変わった魚の食べ方を中心に公開させて頂きます。どうぞよろしくお願いします! Twitter: @YUMEUMI27 ブログ: 夢海のまったり魚日記

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