内臓流通禁止の珍高級魚!?イシナギ
こんにちは!夢海です🐟️
久しぶりに書きためていた記事を更新しつつ、新たなネタも探さねばと動き出した2023年。
なかなか行けていなかった豊洲市場へ調査に出たのは実に3ヶ月ぶりの1月初旬のこと。
年が明け気持ちを切り替えよう!と意気込みたいところだが、何せこの時期は魚が少ない。
魚種的な意味でも、物量的な意味でも、海が時化ているだとか、漁師さんの長いお正月休みだとかで市場に活気が戻るのは年が明け15日を過ぎたあたりからじゃないだろうか。
市場へ来たはいいが、何にしても魚種が少ない。
良くしてくれる仲卸さんを何軒か歩き渡るも
「今日はものないよ」
と口々に教えてくれる。
この日はキンメダイが多くきたからか、それなりに値崩れをしていたので、金目を買って帰るのも悪くない。だなんて考えながらも歩きついたお気に入りの仲卸さん。
居ました居ました、面白いものが居ましたよ…!
さて、内蔵は必ず抜かれて流通する魚とは一体どのようなものなのか、紹介していきます!
目次
オオクチイシナギの特徴
今回紹介する魚はオオクチイシナギ。
この魚を知っている知らないで魚マニアか否かに分かれるような、マイナー過ぎないマイナー魚的立ち位置ではないだろうか。
ソイやハタに似た姿で、「それらの仲間だろう?」と安直に考えてしまうと見事に罠にハマってしまうのが魚の面白さ。
イシナギことオオクチイシナギはスズキ目イシナギ科。さらに掘り進めるとイシナギ属に分類される。
そしてこのイシナギというと背鰭棘が丈夫で長い上にかなり鋭く尖っています。
背鰭の荒々しさを見ていると、ハタというよりもソイ類を想像するがいかがでしょうか。
漁法はなんだろうなんて考えましたが、スレの様子や銚子産ということで底引き網漁に掛かったものだと判断しました。
もう少し北へ行った茨城県那珂湊周辺でも
そしてこの魚を語る上で気になるのが、
「オオクチと付くけど、口が小さいのもいるの?」
という疑問。
これもまた面白いエピソードがあり、まず結論から話すとコクチイシナギという種類は存在します。
本来コクチイシナギというのは太平洋を挟んで東側、アメリカの西海岸に生息するとされています。
しかしこのコクチイシナギは、日本では相模湾から1個体しか見つかっておらず、本当にコクチイシナギだったのだろうかと疑問視すらされています。
このあたりの論文はざっくりしか読めていないのであまり適当なことば言えないのでこのあたりにして。
タイトルにもある内蔵が抜き取られているという話を。
外敵に狙われ食べられてしまうという原因でもなければ、通常の魚のような内蔵がしっかり存在する。
ではなぜ内蔵を抜くのか、それは肝臓にビタミンAが非常に多く含まれており、これを食べ過ぎてしまうと中毒症状を発してしまうからです。
そのため購入した時点でこのように内蔵が取り除かれています。
下処理せず楽チン!と思う反面、鮮度感や脂が調べにくくなってしまうというのも事実。
とはいえ下処理の手間が無いのは楽でいいという点は否定しません。
そして頭は以前より欲しいと話を聞いていた、骨格標本を作る方へ。
私も過去に小型の個体で挑戦してみましたが、脱脂が甘くすっかり茶色くなってしまいました。
三枚に卸しました。
フィレの様子はハタやタラにソイ類のような、根魚などに似た質感です。
やや水っぽく、もっちりとした質感。
身の鮮度感からまだ水揚げから僅かしか経っていないものと考えられます。
生食用に柵取り。
白い薄皮が残り、ハタのように血合いが目立たない魚かと思えばそうでもない。
なかなか食用をそそられる見た目をしています。
残りは調理に合わせて都度カットしていきます。
オオクチイシナギの料理
オオクチイシナギの刺身
まずは素材の味をそのまま。卸してすぐのものをお刺身で頂きましょう。
プリっとした身で期待値は高かったものの、これが味に直結するかというとこれが微妙。
歯ごたえがあり、身の質は確かに良いのですが何せ味がない。
旨味もそこまで感じられず、それでいて脂もあまりない。
イシナギは大きくなると100キロを超えてくる超大型魚。その1/50サイズの個体ではまだまだ脂が乗らないのか、そもそも種として脂の乗らない魚なのか。
前者だとは考えられます。
相場は5キロを越えてくると一気に高くなる印象。
やっぱりその辺りからおいしくなるのかな。
オオクチイシナギの握り
刺身が微妙とくると当然握りもそれほど美味いものではありませんでした。
見た目は美しく美味しそうなんだけどね。
最初の一口目の歯切れはとても良いものですが、噛んでも旨味は出てこずやはり味が薄い。
ほんのりと甘味がある程度で、シャリの味に負けてしまうほどでした。
オオクチイシナギの昆布締め
刺身がイマイチでどうしても美味しく生で食べたい!という想いを捨てきれず、数日寝かせたのちに昆布で包んでまたふた晩。
待ち望んだこれをスライスしポン酢ともみじ卸で。
昆布の旨味が染みていい感じになりました!
これは美味しいなぁ。
やはりそのまま食べるのではなく、何かしらの方法で味を付けてあげるといいのかも知れません。
オオクチイシナギの天ぷら
揚げ物も試してみました。
なんとも平凡的。その平凡が美味いのかも知れないけど刺身でイマイチな想いをしたからかもう少しインパクトを求めていたかも知れません。
細やかな繊維質でほろほろとほぐれ、北の魚とも脂のある魚とも取れない旨味がしっかりとあります。
血合いは薄く見た目がきれいで、
オオクチイシナギの鍋
塩とダシ醤油仕立てのスープをベースに、湯引きをして臭み消しをしたイシナギの切り身と豆腐、三ツ葉といったシンプルな具材で煮込みました。
中骨をダシに使い、汁にはイシナギの旨味が溶け込んでいます。
そしてこれがまあ美味いこと。
やはりこの魚は加熱向き。というよりも、加熱せずに食べるのは勿体ない。
程よく硬く締まり、魚らしい旨味もしっかり詰まっています。
さっぱり系の味付けにしたのが正解だったのか、イシナギのうまさがより強調され、“魚を食べている感“がしっかり伝わります。
オオクチイシナギの西京焼き
最後は西京焼きで締めましょう!
「加熱してもうまい」は、果たして焼きにも共通するのでしょうか?
「おいしいに決まってる!!』
聞くまでもありません。
イシナギそのものの旨味に西行味噌が加わり、味に奥行きというかコクがうまれます。
オオクチイシナギの評価
価格 ・・☆☆☆
コスパ ・☆☆☆☆
珍しさ ・・☆☆☆
味わい ・☆☆☆☆
価格
・大きいものは価格がハタなどの高級魚に並ぶ高い魚だが、小さいものは比較的安価。
コスパ
・内臓が抜かれている分、捨てる箇所が少ないと考えると消費者にとってはコストのいい魚。頭こそ大きいものの、身はふっくらし可食部は多い魚。
珍しさ
・冬場に市場でも見かけるが、魚が大きく高い分、消費されている場所(お店)は限られてくると思われる。食べる機会はあまり多い魚ではない。
味
・加熱して大変美味。程よく身が締まり旨味がある。生だと旨味にかける(約2キロ個体)。
今回は内臓流通禁止の高級魚、オオクチイシナギを食べてみました。
過去に手のひらサイズのものを食べたことはあるものの、やはり美味さを堪能するには大きいものでないとその魚の真価には触れられません。
ここまで幅の広い加熱調理に向く魚だと思いもしませんでした。(そりゃ高いわけだ。)
様々な方の意見やブログなんかを覗かせて頂くと刺身が美味いとどうもある。
やっぱり大きいものは違うのかな。
誰か大きいオオクチイシナギを解体する機会があれば中落ちだけでも恵んでください。(笑)
副管理人:夢海
未利用魚の有効活用方を探して、様々な魚種を食べて美味しく食べられる方法を研究しております。今まで550種以上の魚類を食べてきました。変わった魚の食べ方を中心に公開させて頂きます。どうぞよろしくお願いします! Twitter: @YUMEUMI27 ブログ: 夢海のまったり魚日記
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません