「脳は否定形を理解できない」の科学的根拠を解説

こんにちは、皆さん。いきなりですが「ピンクの像を想像しないでください。」

どうでしょう、頭の中にピンクの象が浮かんだのではないですか? そう、今回はこのフレーズでおなじみの「脳は否定形を理解できない」ということについて考察していきます。

脳は否定形を理解できない」というフレーズは、自己啓発などの本でよく使われます。「否定形で物事を考えると、それをより意識してしまい、否定形で考えた行動をしてしまう」と言われています。時には、「だから物事は肯定系で考えよう」とも言われます。しかし、果たして本当にそれは正しいのでしょうか。

科学的な論文などもベースにして、その根拠を解き明かしていきたいと思います。

 

一般的な意見について

この、「脳は否定形を理解できない」というフレーズの根拠について調べてみると、なかなかに色々な意見が飛び交っています。中には、「脳は否定形を理解できない」というフレーズを、脳科学者や医者の方などでも言っている人がいるそうです。

しかしながら、このフレーズを使用しているサイトや本の多くで、論文や科学的根拠テーマが示されていません。

論文が示されていないことから、このフレーズ自体を疑似科学という人もいます。そもそも、「脳は否定形を理解でき”ない”というのが否定形であること自体がおかしい。」なんて反例を示してる人もいます。

その一方で、先ほどの質問のように、実際に否定形で質問するとそれを思い浮かべてしまいます。そこから、「その現象自体が、このフレーズの根拠である。」と言う人もいます。

どちらにせよ、ほとんどの場合で一般的にはあまりはっきりとした根拠が知られていないのは確かなようです。

 

 

否定形で言われると想像してしまうのは科学的根拠があった!?

しかし、その出典をたどっていくと、意外にもちゃんとした科学的根拠が見えてきました。

ピンクの象を想像しないでください」というフレーズ自体には、参考文献を見つけることができませんでしたが、代わりに「シロクマのことを考えないでください」というフレーズで、この現象を実証している論文を見つけました(Wegnar et. al. 1987)。 この実験は通称シロクマ実験と呼ばれています。

すなわち、この「想像しないでください」と言われると逆に想像してしまう現象自体は、実は科学的には証明されていたのです。

この現象を専門用語では皮肉過程理論と言います。その中で、「考えないようにすると、よりそのことを考えてしまう。」ということを科学的に結論づけています。

なるほど、ということは脳は否定形を理解できないというのは正しそうです。しかし、そうと決め付けるのは、まだ早いです。なぜなら、この実験はあくまで思考実験です。行動を意識してしまうからと言って、実際の行動に反映されるとは限りません。

 

 

否定形で考えた意識は行動につながるのか?

先ほどのシロクマ実験で、意識というレベルでは「脳は否定形を理解できない」現象が正しそうだということがわかりました。しかしながら、そのフレーズを使用している多くの本などでは、「だから否定形で考えると、それが行動としても現れしまう。」といった説明がされています。

あくまで先ほどは、意識レベルでの話です。果たして本当に行動も変わっていくのでしょうか。

調べて行くと、その答えも見つかりました。結論から言ってしまうと、「否定形での思考は、その行動を生じさせる。しかし、その対象は強い欲求に関係する場合のみ。」というのが科学的な見解なようです。

強い欲求というのは、例えば、タバコやチョコレートがあげられます(Erskin J.A.K et. al. 2010, ① )。

例えば、アースキン教授による実験()では、「チョコレートについて考えるチーム」「チョコレートを食べないように考えるチーム」「好きなことについてチーム」にチョコレートの味見と評価をさせました。その実験は、本当は評価をするためでなく、各グループの食べる量を調べる実験でした。そして、結果は「チョコレートを食べないように考えるチーム」が1番多く食べていました。

 

 

結局、「脳は否定形を理解できない」は科学的に正しいのか?

以上の二つを踏まえ、結果的に科学的にちゃんと根拠があるのかということを考えてみます。
否定形で考えると、より意識してしまうのは本当のようです。そして、その対象が強い欲求を伴う場合は行動にも現れます。

すなわち、「脳は否定形を理解できない」というフレーズは、全てに対して必ずしも当てはまるわけではないが、時に対象が強い欲求を伴うものの場合は、科学的に正しいとは言えそうです。

 

 

まとめ

今回は、「脳は否定形を理解できない」というフレーズについて、科学的根拠を解説してみました。そして、意識化では正しいが、行動に現れるのは強い欲求を伴う場合のみという結論を得ました。

とはいえ、僕個人としては、やはり物事は肯定的に考えていこうと思います。肯定的に考えることは、なにより具体的な対策案・行動を考えることになります。何かを成し遂げたいときは、何かをしないことより、何かをすることの方が大切だと思っています。勿論、これは僕個人の意見です。なので、読者の皆様が、この記事を読んでどのように考え、行動するかは自由です。

世の中には、このような疑似科学とも捉えられるような説が多く存在します。そして何より、未だにしっかりと分かっていないことも多くあります。科学を根拠にしつつも、結局は、最終的に自分自身でしっかり選択し、どのように考え、どのように行動するかを決めていかなければなりません。 今後も、皆さんのお力になれるよう、このような科学的根拠の考察や、証明なども行なっていきます。

 

参考

Wikipedia「皮肉過程理論」
Thoughts on suppression

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