秋に美味しいタイ科①キチヌ

こんにちは、夢海です🐟️

 

10月になりまだ汗ばむ気候があっても魚は多種多様となってきています。

秋になると特に食べたくなるのがタイ科魚類で、一般流通するどの種も美味しそうに見えてきます。

今回は秋に美味しいタイ科魚類と題して、キチヌを紹介します。

 

 

キチヌの特徴

今回の魚はキチヌ。

鰭が部分的に黄色い、クロダイに比べやや銀色がかった魚になります。

 

本種は夏場に少なく、寒くなってくると次第に増えてきます。

 

今回のものは五島列島産。

キチヌは比較的内湾に多く、産地としても瀬戸内などから入ってくる印象であったため、五島列島のものは見たことがないか、あっても一度二度あるか程度であると考えられます。

外海のものは食べたことがなかったという事もあり、2尾購入。

 

箱にはヘダイとして書かれており、7入と9入の箱でやって来ていたものの、そのほとんどがキチヌでした。

関東ではこれをキビレと言い取引きされるので当然値札に書かれるのは"キビレ"で、伝票にもキビレと書かれます。

 

小顔でシャープな顔つきはタイ科でもカッコいい特徴。

 

臀鰭は強い棘がある。無毒とされるが非常に痛いので要注意。

 

尾鰭の下葉が一部黄色くなっている。

今回比較したところ、小型の個体は色味が強く、大型のものほど薄く感じられた。

 

デブロク(サイズのばらつきのこと)があった荷でしたが、ここから最も大きいものと小さいものを購入。

この物価高、魚価高騰中であるにも関わらず、キロあたり¥1000なので財布に優しい魚です。

 

市場から帰りそのままキッチンへ直行。

腹も減っているのでさささっと卸していきます。

 

卸すとやや濁り脂が混じっている様子がわかります。

焼霜も美味い魚なので、腹側は炙り、背側は皮を引いてしまいます。

 

皮を引くと紅白ハッキリした縞模様があり、クロダイに次いで濃い血合いをしています。

身の張りもまたタイ科魚類にしては硬い部類で、鰭のトゲが強固なことを除いて初心者にも扱いやすいものとなります。

 

大型の個体は成熟したメス個体で、巨大な卵巣が出てきました。

処理が丁寧なおかげか、血がそれほど混じらず汚れている印象もありません。

これはさっと湯通しし、身と合わせて2品つくります。

 

 

キチヌの料理

キチヌの刺身

まずは単に刺身から。

血合いが鮮やかで見た目が非常に美しいです。

外見が赤いタイよりも、グレーや黒の地味なタイの方が血合いが鮮やかに見えます。

 

背の身はしっとり、優しい舌触りで、触れた途端に甘さが溶け出ます。

後を追うように酸味がついてきます。

内湾のものはここへ磯の風味が合わさり、より複雑な美味さがありますが、五島列島のものは透き通るようなクリアな美味しさ。

近海物の複雑な美味さはキチヌらしいと感じられる一面でもありますが、癖のないサッパリとした透き通る味わいもまた、タイ科の良い点であると思えます。

 

炙った腹側。

脂はそれほどで味の濃さはまずまずなところだが、皮のうまい味、クニクニとした食感が面白い。

腹の肉そのものは薄いため、殆ど皮の食感がメインとなってしまうものの、噛むと溢れる旨味、そしてほんのりではあるものの甘みのある脂。

 

皮が厚いので強めに炙り、バーナーの火力によって半分焼き魚のように変化した肉もまたうまい。

タイ科魚類の焼霜はまだまだ一般的ではないように思えますが、湯引きのみならず、炙っても美味いんだぞということをここに明記しておきます。

 

キチヌの酢〆の棒寿司

小型の個体の半身を酢で締めて棒寿司に。

背腹を切り分け、ラップで棒状に丸めて半分を炙りました。

 

銀色があり、身との境目の薄ピンク色の血合い、そして半透明な身が実に美しく、手土産にこんな物をもらえれば嬉しくなるでしょう。

比較的小型の個体のため皮は硬すぎず、なんとか噛み切れるほど。

より細かい飾り包丁を入れてあげるか、炙れば気にならないレベルです。

 

酢が入り、噛み心地のいい皮目に詰まったキチヌの旨味が溢れて何とも言えない幸福感です。

青魚の酢締めもいいけど、たまにはこういうもちっとした白身を締めてみても悪くない。そう思いました。

 

キチヌの煮付け

小型の個体の半身と真子を煮つけました。

身は魚らしい旨味があり、しっかりした皮の食感がもちっとして面白いです。

近海魚的な美味さが豊富で、皮目にはほのかな脂が感じられ甘いです。

 

卵が非常に繊細で美味。

生の状態ではペースト状に思えるほど、粒が細かく滑らかな印象ですが、火を通すことでひと粒ひと粒が際立ちます。

香りとかはどうなのだろう。という疑問はありますが、触った質感はボラ子に近いものがあり、カラスミと同じ製法で作ってみればどうなるのだろう。と気になる魚です。

 

キチヌ鍋

あらを焼いたものと昆布を水に漬けておき出汁を取ります。

 

沸騰させないところで火を止め、キチヌのあらと切身、真子を入れあとは具材をお好みで。

ここに酒、醤油を入れて味を整えます。

 

このキチヌ鍋が今季初の鍋となりました。

朝晩の冷え込みから着る服を気にしてタンスの奥から冬の服を引っ張り出した日の晩飯のことで、今夜は絶対にキチヌで鍋を食うんだ。なんてこの日の目標としていました。

 

出汁は優しい口当たり。内湾の個体ではよりドスンとした味の重みが感じられるが、軽いあっさりした口当たりは外海のものだからなのか。

身はホロッとほぐれ、筋肉の節(ふし)がホロッホロッと崩れるタイプ。

煮込めば皮は柔らかく、ほんの少しツルッとした食感も感じられます。

 

卵からは甘味が感じられてポン酢をかけて食べるとおほほと笑顔が誰だって溢れることでしょう。

 

とはいえ五島へ行ったことがないため、残念ながら産地の情景が浮かんできません。

対馬・五島列島は魚の産地としても大きいためいつかは行くべき所でしょう。

 

色々な作業を終えてから食べる温かい鍋は体の芯へと滲みて落ち着きつつも、今年も早いことで1年が終わってしまうのだという焦りすらも感じます。

 

暑さを気にせず魚を鍋で食えるという嬉しい季節がやってくる。

そんな事を思いながら楽しみに過ごしていきます。

 

 

キチヌの評価

 

価格   ・・・☆☆

コスパ  ・・☆☆☆

珍しさ  ・・☆☆☆

味わい  ・☆☆☆☆

 

価格

・まだまだ安い魚。クロダイと比較してもやや値は下回る。

 

コスパ

・頭が小さく体高があり、歩留まりは普通〜やや良。魚価が安いこともあり、コスパに優れた魚と言える。

 

珍しさ

・夏季は少ないが、秋頃から見かけるようになり、春先までまばらに入荷する。

 

・同時期に流通するクロダイやヘダイに比べると脂乗りはやや劣る。しかしその分魚の味があり実に美味い。加熱をしてもボソつかず、比較的幅広い用途で美味しいもの。

 

今回はキチヌを調理し頂きました。

秋になり、市場にはタイ科の種類に数が増えたと見て分かるようになります。

どの種も津々浦々来ており、産地により特徴が違えどどこのものも違った美味しさがある事でしょう。

種類も豊富で、本種キチヌやクロダイ、ヘダイなどは小売店でも安く買い求めることが出来ます。

この秋冬に、美味いタイを買ってみてはいかがでしょうか!

 

ライター紹介

副管理人:夢海 未利用魚の有効活用方を探して、様々な魚種を食べて美味しく食べられる方法を研究しております。今まで550種以上の魚類を食べてきました。変わった魚の食べ方を中心に公開させて頂きます。どうぞよろしくお願いします! Twitter: @YUMEUMI27 ブログ: 夢海のまったり魚日記

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