少し早めのクロダイ

こんにちは、夢海です🐟

 

水産業界、特に食に通じている人たちのこだわりは深く、中でも私は種類や数を食べることにうるさい部類の人間だと、少なからず周りからは思われていると自負しています。

すごい方はごまんといるので、自分が正解だ!とは言いませんし、まだまだ若いこともあり未熟者でもあります。

 

そんな修行中勉強中の私は水産業に携わっており、かれこれ5年目といったところになります。

 

この業界へ入るまでは図鑑の知識が主体となっており、それまでは市場で見かける時期など分かりませんでした。

 

しかし1年、2年を過ごし、3年目に「そういえばこの魚は去年のこの時期に見た」と分かるようになり、ものの良し悪しも感覚で掴めるようになります。

当然そうなると美味しい時期に良いものを食べたいのが普通。

 

しかし魚オタクである私の困ったところがここから。

あえて時期を外したものにまで興味が湧いてしまったり、同じ時期でも産地を変えて試してみたくなってきてしまう訳です。

 

かなり前置きが長くなってしまいましたが、今回は旬と呼ぶには少々早い、秋のクロダイを実食し調べてみました。

 

 

クロダイの特徴

今回のクロダイは10月中旬に漁獲された香川県産。

通常、クロダイの旬は冬から春先にかけてとされており、これには私も大いに同感できます。旬というものは産地にバラつきがありますが、クロダイは大体の産地が冬〜春の間に収まります。

そして個人的に秋のクロダイというものを知らなかったという意味で購入してみました。

 

特に1月のクロダイが最も臭みが抜け、身もブリっと太くなり味わい深くなります。

そのため、今回の個体は最盛期と言うにはまだ少し早いのかなといったものになります。

 

市場などに行くと比較的普通の食用魚という扱いですが、世間的には釣り魚の印象が強いようで、食べられるんだと言われることもしばしば。

本当は美味い魚なのに知られていない魚でもあるのかな。

 

背鰭は棘条の側面が銀色に輝くのがクロダイの特徴ではないでしょうか。カッコいい✨

 

臀鰭の付け根を触るとブリっと太く、この日あった入荷の中では最もいいものを選べたと思います。

最盛期とは言えないものの、流通に乗るくらいだから悪くはないそう。

 

腹も膨れており、産卵を終えまさに餌をたらふく食べている時期なのでしょう。

 

内容物はカニ類の殻が出てきました。

クロダイは捌いていると甲殻類や貝類、海藻類が出てくることが多いです。

特にこれからの季節になると海藻が増え、これが身に付いてしまうと臭みの元となるため、内臓を処理してから卸すようにしたいですね。

 

クロダイのよい所は血合いが非常にきれいなところ。

黒い皮の下は半透明の身と鮮やかな赤色のコントラストが見られます。

 

 

クロダイの料理

クロダイのあらい&炙り

まずは購入当日に生で頂きます。

皮を引いた背節は切りつけ、氷水で締めてあらいに。

腹側は炙ります。

 

 

まずはあらいから。

 

皮目にゴリッという硬い食感があり、氷水で引き締まった身は噛むと磯の風味を香らせつつ、ほんのりと感じる甘味が現れます。

漁獲翌日ということもあり、白身はもちっと弾力が感じられ、滑らかな舌触りの表面からほのかに甘さを感じます。

 

一方で焼霜は皮が厚い腹側を使いました。

臭くない程度に風味があり、プリンっと弾ける食感です。

香ばしさの下に微かに感じる繊細な甘味。

まだまだ冬の美味さが見え隠れし、よく味わわなければ気がつかない美味さを探すという意味でも、この時期のクロダイは面白いものでした。

 

ちぬ鍋

残りはあらも含め切り身にして鍋に。

このチヌ鍋こそ至高の逸品で、寒い時期にうまくなるクロダイこそ鍋にすべき魚だと思っています。

 

寒くなるのが遅かった2023年、気温的にはまだ待ちたいところですが、魚はどんどん次の季節へと代わり行き、鍋にせざるを得ませんでした。

 

寒かろうと暑かろうと、この素晴らしく炊きあがったクロダイの切り身を見るとどうだってよくなります。

 

昆布ダシとクロダイのあら出汁で取ったスープをベースに、味を整える程度に醤油を付け加えました。

汁にはあらの旨味があり、溶け出した脂がスープの表面でキラリキラリ輝いています。

 

 

クロダイの評価

 

価格   ・・・☆☆

コスパ  ・・☆☆☆

珍しさ  ・・・・☆

味わい  ・☆☆☆☆

 

価格

・まだ最盛期でないため安く手に入る。漁法により、時期が早いと身が焼けて使えないものも混じることがあるが、それでも当たりを引ければやすいもの。

 

コスパ

・歩留まりは平均的。あらは焼いたりすることで美味さが増す。

 

珍しさ

・一般的に見かける。夏場には少なくなり、涼しくなるにつれ産地が増えていく。

 

・大変うまい。最盛期のクロダイは実に上質な白身。今回の個体はやや臭みがみられるものの、決してハズレとは言えない。臭みが現れるとしたら皮目に集中し、磯のにおいが強い個体は皮を引きムニエルやフライにするとよい。

 

今回は旬に入る前、これから栄養を蓄えようと必死に餌を食べまくっている秋のクロダイを頂きました。

感想としては、最盛期に比べさすがに味は叶わないものの価格が非常に安いため食材としてとても優秀だと感じました。

やはり一般の方の中では、クロダイは"工業地帯を泳いでいる魚"という認識が強いみたいで、まだまだ食用としての認知度は高くないと実感します。

非常に美味しい魚なので、お店やスーパーで見かけた際はぜひ召し上がって頂きたいです。

 

ライター紹介

副管理人:夢海
未利用魚の有効活用方を探して、様々な魚種を食べて美味しく食べられる方法を研究しております。今まで550種以上の魚類を食べてきました。変わった魚の食べ方を中心に公開させて頂きます。どうぞよろしくお願いします! Twitter: @YUMEUMI27 ブログ: 夢海のまったり魚日記

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