隠れたうまい深海魚クサカリツボダイ

こんにちは、夢海です🐟

 

連日豊洲に通っては、毎日何かしらお土産に持ち帰っていたある日。

 

「今日は特に目ぼしいものがなかったな」

と半ば諦めつつ、帰路に付く前にふらりふらりと立ち寄った仲卸さんで面白いものを見かけてしまい、無事5日連続で魚を持ち帰る事となりました。

 

今回の魚は人生で1個体しか食べたことがない上、まだまだ初心者であった頃に入手したクサカリツボダイという珍魚の紹介になります。

 

 

クサカリツボダイの特徴

改めて、今回の魚はクサカリツボダイ。

 

「いやいや何て?もういっぺん言ってみい」

 

という声が聞こえてきそうなのでもう一度言います。

クサカリツボダイです。

 

人名が付く魚の名前って、どうしても一度では飲み込めず聞き返されることもしばしば(タナベシャチブリやタナカゲンゲなど)

 

 

そんなクサカリツボダイですが、実は食べた事あるなんて方、一定数いらっしゃるのではないでしょうか。

 

というのも、市販で売られているツボダイの干物という名で流通しているものが本種であるという事が多々あります。

半身のセンターカット(背骨の中央を真っ二つに切り分けられている方法)でやや体の細長い、グレー色をしたものは本種の可能性が高いです。

無駄にデパ地下散歩したがる私は、塩干物やへ立ち寄ると大体どちらが使われているかと注目して見てしまいます。

 

クサカリツボダイだと種を認知して食べている方は少なくとも、知名度以上に食べたことがある方は一定数いると思われる魚であると考えます。

 

クサカリツボダイ、及びツボダイは主にはえ縄などで漁獲されます。

今回のクサカリツボダイもはえ縄漁で漁獲されたものと考えられ、口には釣り針を外した跡が見られます。

 

鱗は細かい円形状で、なかなか頑固で剥がすのにひと苦労。

マコガレイなどのカレイ類のウロコを落とすような感覚です。

 

取り残しがないかをしっかりチェックし、卸していきましょう。

 

片身を卸すと真っ白に濁った光沢のある身が顔を覗かせます。

 

前回食べたのがもう5年ほど前の話なので記憶も薄れてしまっていますが、脂はなく淡白・身は硬くゴリゴリ。

な印象で、特別美味いわけではなく、平凡な白身魚というイメージで止まってしまっています。

 

ちょうどその当時は鮮魚を扱う会社に勤めだし、初めて職場で買ったのがツバメウオ、その次にツボダイとクサカリツボダイを。というところを覚えています。

2018年7月頃のもので、季節的にもちょうど5年前という事になります。

まだまだかけだしの初心者も初心者な頃で、1尾の魚も満足に卸せない。そんな頃に食べた為、魚のポテンシャルを最大限に引き立たせられてなかった事でしょう。

 

今回はそんな5年ぶりに再会したクサカリツボダイなので、再評価及び最大限に美味しく頂いていきたいと思います。

 

 

クサカリツボダイの料理

クサカリツボダイのお造り

魚体はグレーで地味な見た目をしているものの、身はやや透明感のある白い身に優しい薄ピンク色の血合い。

あしらいで色を足してあげたのでかなり華やかになったかと思います。

 

以前食べたことがある個体はここまで脂のりが良くなかったし、皮を引く際に折角きれいな色をした血合いを皮に残してしまったりと、勿体ないに勿体ないを重ねたような処理になってしまいました。

切り方も厚みのある切り方にハマっていた頃で、柵をそのまま2cmほどの厚さでカットしていたのですから、そりゃゴリゴリとした食感の印象のまま残ってしまう訳です。

それでは薄く造った今回のものはどうだったのか…

 

これがとにかく美味い!!

食感は文字通りコリッとした歯ごたえ。

万人受けする刺身とはこのようなものなのでしょう。

 

そして舌の上で感じられる甘味。水揚げ+購入してからの期間を考えても5日は経っていると言うのに、ねっとりというよりサラサラした鮮度を感じる脂のり。

優しい香りがあり、そのまま食べてもコクが感じられます。

瑞々しさもあり食べ飽きません。

 

前回のものは八丈島から箱いっぱいに詰められたもので、下に入っていたものを引っ張って来てしまったのか、臭みなども感じられあまり美味しく感じられませんでした。

いい意味で記憶を更新&この魚をより正確に評価できたと思います。

 

クサカリツボダイの煮付け

姿造りに使った半身をちょうど真ん中で切りわけ、頭の方を煮付けにしてみました。

この食べ方(半身で造り、飾った頭を加熱調理)は、中骨から出る出汁も余すこと無く使え、おまけに煮崩れも防いでくれるためかなり合理的だと思います。

 

厚みのある皮は箸で崩せるほど柔らかくなり、

身はふわっと密度が軽く、筋肉の節々の間に汁が入り込んでツボダイの旨味と混ざります。

脂が溶け出し、汁からは魚の甘みがよく感じられます。

これは紛れもなくご飯のともになるタイプの煮付けで、冷やご飯を慌ててレンチンし汁を1滴も残さず完食しました。

 

クサカリツボダイの西京焼き

煮付け用に切り分けた半身の下の方を骨から剥がし、西京みそに漬け込みました。

表面はしっとり、中はふわふわな仕上がりになり、味噌の旨味と共に深みのある白身魚のホクホクとした香りがあり大変美味。

 

干物にして素材の旨味をギュッと閉じ込めるもよし、味噌などで身質を柔らかくしつつ、ふわっと軽い焼き上がりのものを食べるもよし。

焼きにしたときのポテンシャルが高い魚です。

 

 

クサカリツボダイの評価

価格   ・☆☆☆☆

コスパ  ・・・☆☆

珍しさ  ・・☆☆☆

味わい  ・☆☆☆☆

 

 

価格

・やや高級な魚。キンメダイなどと同クラスの価格帯。都内ではキロ2000円台〜3000円が多い。

 

コスパ

・頭が大きく歩留りはイマイチ。

 

珍しさ

・やや珍魚。探せば入手は出来る。太平洋側の産地で多くツボダイと表記される大半が本種で、ツボダイの方が少ない。ツボダイを狙う場合は長崎など九州産を探すとよいと思う。

 

・鮮度が良ければ刺身でよし、焼いても煮てもうまい。程よく水分があるため身はしっとりしていて、しつこ過ぎない甘い脂も感じられる。

 

 

今回は数年ぶりに再会したクサカリツボダイを美味しく頂きました。

まだまだこの魚の良さを引き立たせられていなかったという思いもありつつ、食べたことが一度きりであったという、この魚を語るにはまだまだ浅いとも思っていました。

そこでここ最近は再収集、再記録を行っており、"それまでのイメージで語ってしまう事のないよう"、新たな記録を刻む事に注力しています。

 

魚は特に時期や産地、漁法などなど様々な要因で差が出てきやすい食材であるため、

仮に一度食べて美味しくなかったものだとしても再び試してみて欲しいです。

 

ライター紹介

副管理人:夢海 未利用魚の有効活用方を探して、様々な魚種を食べて美味しく食べられる方法を研究しております。今まで550種以上の魚類を食べてきました。変わった魚の食べ方を中心に公開させて頂きます。どうぞよろしくお願いします! Twitter: @YUMEUMI27 ブログ: 夢海のまったり魚日記

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