姿を知らない魚①タイセイヨウサバ

 

こんにちは、夢海です🐟️

 

今回の魚は非常に多くの人の食卓に並んだことがある魚で、種としては平凡だけど珍しいものになります。

水産国とされる我が国では、国内で水揚げされたもの以外でも冷凍輸入品も多数消費しています。

 

輸入品となると遠い海域で漁獲された魚が主流となり、商品名などで名前は聞いたことがあるものの元の姿が分からない。見たことがない。という方が殆どでしょう。

よっぽどの魚好きでなければ当然のことで、国内では基本的に流通しない。水揚げがあっても限定的。といった魚がこれに当てはまります。

今回はそんな"姿を知らない魚"と題してタイセイヨウサバを紹介していきます。

 

 

タイセイヨウサバの特徴

一般的にはノルウェーサバと呼ばれるのもので、飲食店から加工品に至るまで、ノルウェー産とされているサバは本種になります。

何気なくランチで食べたサバ定食、さば味噌煮、居酒屋で最初に頼んだしめ鯖。などなど、近くの海のサバを食べているかと思えば、知らずうちに遠い遠いノルウェーの海のサバを食べていた。なんてことはよくある話です。

 

そんな遠い海から来るのだから、一般的にはフィレなどに加工して冷凍された状態で輸入されます。

しかしそんな貴重なタイセイヨウサバを今回は貴重な生の状態で入手できました。

しかし姿を知らない魚とされてもサバはサバだ。姿を知らないと言われましても、、という考えで今脳内にマサバが思い浮かんでいる方も多いことだと思います。

 

まずこちらがマサバ。

 

一般的に生鮮品として流通するものはこのマサバとゴマサバの2種。

一般にサバと言われれば思い浮かぶ姿はこれでしょう。

目の周りは暗く、体の中心が一番高くなります。

 

続いてこちらがタイセイヨウサバ。

 

体型はマサバなどに比べて体高が低く、細長い体つきというような印象です。

口元、特に下あごがしっかりしており、どこかハガツオらしい顔つきを感じられます。

模様はハッキリしており、太く色味が濃い印象。

 

600グラム前後のものを2本買い求めてきました。

タイセイヨウサバがラウンド(丸)の状態は冷凍品で購入したことがあり、我が家に登場するのは初めてではありませんが、生の状態は初めてとなります。

 

生鮮でしか感じられない深緑が非常に美しく、冷凍してしまうと青みを増してしまう為、この色味はチルドでしか見られないことでしょう。

これを観察する為にも買ってきて正解でした。

 

はるばるノルウェーからやってきたとは思えないほど鰓は鮮やかで、徹底された品質の管理が伺えます。

 

背の色は深緑をしており、冷凍のノルウェーサバはこの色素が落ちて青くなってしまいます。

模様は日本産サバ2種と比べても最もハッキリとしており、太い縞模様が印象的です。

 

腹鰭の付け根は黒くなっている。

タイセイヨウサバの腹鰭をみること自体、機会がないとなかなか出来ないので細部まで撮影していきます。

 

身が柔らかいのは鮮度が落ちたような柔らかさではなく、脂が豊富で身が柔らかく、脂の多さが触っても伝わります。

 

身は驚くほど白く、包丁もあっと言う間に重たくなります。

国産天然サバではまず見られないほどの白さで、根本的に質の違いが感じられました。

通常でも脂の多いタイセイヨウサバの中からさらに厳選しているそうなので、冷凍のものでもここまでの脂ノリの個体はなかなか出会え無いのではと思います。

 

 

タイセイヨウサバの料理

生タイセイヨウサバの刺身

まずは購入当日の鮮度のいいうちに刺身にしてみます。

内臓を見たところ寄生虫らしいものは見当たらず、業者としては推奨されていないものの、大丈夫であろう。と考え刺身にしました。

※加熱前提のものを生で食べる際は自己責任で。推奨はしません。

 

皮を引いても銀皮に模様がしっかりと残り、普段食べるマサバなどに比べても変わった見た目であると分かります。

箸で持つだけで崩れてしまいそうなほど柔らかい身をそっと持ち上げ、生姜醤油でいただきます。

 

舌に触れた途端に崩れるというか溶けるというか、驚くほどに滑らかな舌触りであっという間に身の中心部から溶けていき、皮目の食感のみが残るといった様子。

 

そして食べ馴染んだノルウェーサバを使ったしめ鯖で香る、マサバとは違うあの香りが強く感じられます。

あの風味は酢や昆布などで添加されたものではなくノルウェーサバそのものの味であったのだと納得しました。

 

脂の質がそもそも国産養殖サバとは違うものの様に感じられます。

赤身の香りを抜いた蓄養本マグロの中トロ

例えるならばこれが最も近いでしょう。

 

この魚を食べた方には共感いただける感想ではないかと思います。

これが全身どこでも味が一定なのがマサバやゴマサバと異なる点です。

 

脂が強く、さすがに全てを生で食べきれなかったのでいくらか炙りました。

 

これが非常に美味い。

むしろ食べやすさはこちらに軍配があがるので、炙りが最適解かもしれません。※炙りの場合でも自己責任で。

 

強めに炙ったので強い香ばしい風味に、半分焼き魚のようなものに変質し、一度焼かれて液体となった脂は変質し、固まろうと戻る前に口へ放ると強い甘みと、豊富な旨味に襲われます。

もっと炙っても良かったな…。

と考えてももう殆どの刺身は腹の中、です。

 

タイセイヨウサバのカレームニエル

タイセイヨウサバは半身にして血合い骨を取り除く。

カレーパウダーなどをまぶして馴染ませたら小麦粉を薄くたたきオリーブオイルでソテーする。

 

カレー風味のムニエルの完成!

 

身に含まれる脂が凄く、焼いたフライパンにはオリーブオイルとサバの脂が混ざった跡が残ります。

火を通してしまっては生である意味はないのではないか。なんて疑問もありますが、冷凍された食品の香りがなく細かい繊維まで感じられます。

そういった意味でのチルドで流通させるという事は価値があるものだと思えます。

 

表面がカリッと食感の良くなるように焼き上げたものの、表面と中で水分の違いがあり、内側からは強い脂が漏れ出してきてこの脂がきついと感じられます。

下処理が足らなかったのか、正直に言えばムニエルやソテー向きでないのかもしれません。

 

 

生タイセイヨウサバの味噌煮

最後は定番の味噌煮で締めくくるとしましょう。

作り方は通常のマサバ同様。ノルウェーサバだからといって特別な事は何もしません。

 

味噌は麦味噌を使用。

今年から味噌を数種類持つようになり味の違い等を探っているところです。

水気があり、脂のある魚なので水分を使った調理に向きます。

 

凍結されたものに比べてドリップが出ていない分、水分が脂を丁度いいように調和してマイルド味わい。

繊維がしっかりとしており、冷凍品以上にふわっと柔らかい様子か味わえる。

逆に言えば冷凍品は余計な水分が抜けた状態となり、そりゃ美味いよね。と感じる程に、味が凝縮されている状態であるということを学びました。

 

どちらも美味しいけれど、生のノルウェーサバを味わう際は繊維などの質感を楽しむとより分かるかも知れません。

 

 

タイセイヨウサバの評価

価格   ・☆☆☆☆

コスパ  ・・☆☆☆

珍しさ  ・☆☆☆☆

味わい  ☆☆☆☆☆

 

価格

・食材として考えれば高級品。しかし運賃などのコストを考えれば安いとも思えてくる。国産サバと金額を比べれば負ける(高い)が脂ノリは保証されているらしく、価値はある。

 

コスパ

・歩留まりは普通。マサバに比べると小顔だが体高は低い。

 

珍しさ

・魚種としては普通だが、生鮮状態はなかなか出会えない。生ならではの深緑色があり、本来の美しさに見入ってしまう。

 

・非常に美味。推奨されておらず、自己責任でとしか言えないが生はノルウェーサバ本来の香りが楽しめる。握りにしても国産養殖サバとは異なる柔らかさでシャリとよく馴染むものと考える。機会があれば次は握り、しめ鯖など試したい。

 

今回は生のタイセイヨウサバを調理していただきました。

加工品などで広く使用、食されている魚ですが、意外にその姿、元の形を認知している方は少ない魚として紹介しました。

あのコース料理に使われている白身魚はなんの種類だろう、この赤魚ってどんな魚なんだろう。

街行く多くの人はそんなもの気にしない知らない。なんて普段食べているものの元の姿を想像もしないのが当たり前となっていますが、

"姿を知る"と、なんだか世界が広がり、翌日に忘れていてもひと時の"得した気分"を味わえるんじゃないかと思います。

そういった意味で、今回は姿を知らない魚として紹介しました。

 

食味の感動はもちろん、それ以上に、あの深緑色をした生のタイセイヨウサバの魚体の美しさに感動しました。

次回があれば干物やしめ鯖等、より定番的な調理を試してみたいところです。

今後も冷凍品、輸入品の流通が多い魚種をピックアップし、書き起こしていければと考えています。

また他の魚種でも書き込み中のため、近頃公開予定ですので、そちらもお楽しみに!

 

ライター紹介

副管理人:夢海 未利用魚の有効活用方を探して、様々な魚種を食べて美味しく食べられる方法を研究しております。今まで550種以上の魚類を食べてきました。変わった魚の食べ方を中心に公開させて頂きます。どうぞよろしくお願いします! Twitter: @YUMEUMI27 ブログ: 夢海のまったり魚日記

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