真なるクロムツ
こんにちは、夢海です🐟️
2025年、5月も中頃に入ったという頃、魚は安定して入り、暖かくなり種類も色々と来ている時期で毎日市場から荷物を抱えて帰っている日々を送っている。
5月も折り返しの15日、静岡から来たという黒むつが並んでいた。
それも黒むつではなく、標準和名クロムツ、の方である。
長いこと探していた魚で、あれはそうかな?これはどうだろう。という怪しい個体は見ることは見るけれど、今回のように確信が持てる個体にはなかなか出会えなかった。
そしてこれがなかなか高い。
同日に並んでいた、大きさも近しいムツの倍は付いていた。
確かに、ムツよりもクロムツの方が高いという話は聞いたことがあるものの、これほどの差があると言うことを肌で感じられ、いい機会となった。
目次
クロムツの特徴
たまたま前日に現金を下ろしておき、なんと買えてしまう。という事で買い求めてきたのがこちら。

つくづく、市場でクレジットカードが使えなくて良かった!と思う。
豊洲なので津々浦々魚がやって来る。
あれはどうだろう。この産地のこの魚種は食べたことがないな。なんて、見るもの全てが食べる価値あり、なのであれもこれもと欲しくなってしまう。
そんな話は置いておき、今回の主役はクロムツ。
ムツは度々、小型のものなどを買ってはうまいうまいと食べており、定期的に食べるというもののひとつなのですが、今回のクロムツは初めて食べることとなる。
まずムツとの違いは産地が異なるというところから。※全く生息域が重ならないという訳では無いので要注意。
関東周辺でも揚がるものの、長崎など九州からやってくるムツに対し、クロムツは相模湾以北の太平洋側と、やや狭い。
なので西からやってくるものはムツ、静岡より東側の産地でやってくるものの中にクロムツがいる可能性がある、と考えるのが妥当だ。
今回のクロムツは静岡県産。
細かなとこまでは分からなかったものの、見慣れない箱から伊東辺りのものかなと思う。
そしてオレンジ色、茶色がかった見た目のムツと並べてみると、青紫色のような光沢と、〆かたによっては鱗が白っぽくなる。

また、本種とムツを見分けるポイントとして有孔側線鱗数が含まれ、今回の個体は60あった為クロムツに該当した。

クロムツの料理
クロムツの刺身

まずは初日、刺身から。
半身を取り、そこから尾の方を少し切り分ける。
皮を引くと表面には脂が厚い層を作り、尾の方までサシが入る。

背と腹に分けてから切りつけたので1枚は小さいものの、これが驚くほどに味が濃く、香りの引き立ち方なども、高い魚を食べていると言葉にしなくても脳が理解する。
舌に触れたと同時に、重みのある味が広がる。
濃厚というより、重厚感があるという言葉が正しい。
そして血合いからくる酸味が味を幾分か軽くする。
ムツとは明らかに異なる脂の質感であると感じられる。
クロムツの炙り

刺身と同時に尾の方のものをあぶった。
尾の方だから筋っこいかもと考えたが気にならなかった。
このひと切れで非常に強い味があり、まさに酒の肴となる。
むしろこの大きさだからこそ良かったとも思えてくる。
まるで原曲の音量が大きい音楽を、スピーカーで音を絞って聴いているようなものである。
音量を上げて(切身を大きくして)しまうと、繊細な味わいまで感じ取れなくなってしまうし、煩いとも感じられてしまう、と言うと分かりやすいだろう。
クロムツの握り3貫

そのままつけたもの、皮を引いて炙ったもの、皮目を炙り、切り付けたものの3種をつけた。
そのままのものは、まろやかな甘さが目立つ。
シャリも酸味が少し強めのものでなければ、ネタの甘味に包み込まれてしまいそうなほどの勢いである。
しかし単調であり、この後に待っている
続いては真ん中の炙り。
炙って間もないものを頬張る。
あまりにも贅沢過ぎる味わいで、ゴージャスなのだ。
シャリや酢、ワサビから醤油に至るまで、一級品でなければ浮いてしまう。
いくらでも金を出すので、いつしか本格的な店で食べてみたいと思えるネタである。
最後は皮を炙った柵をつけたもの。
これはバランスが素晴らしい。
炙ったことにより、際立つ香りと、クロムツ本来のもちっとした程よい弾力が一番程よく味わえる。
ハレの日、何か成し遂げた時や祝い事の時に食べたいものであり、日常的に食べる惣菜用のものではないことが明らかに分かる。
クロムツの蒸し物

切り身にしたクロムツを冬瓜と合わせてカツオ出汁と酒で蒸す。
仕上げに実山椒を散らして完成。
冬瓜を初めて使ったので皮を取るものだと知らずに湯がいてしまった。
おばあちゃんの作る煮物が美味かったな。と真似てみようと買ったもので、下処理を知らなかった。
皮を除けながら食べていく。
蒸すことでちょうど良い塩梅に脂が落ちて、控えめであったクロムツの味がよく分かる。
クロムツの身もまた奥深く美味いのだ。
クロムツの塩焼き

クロムツは塩をして置いておく。
遠火でじっくり、脂を落としながら表面を炙るような印象で仕上げた。
薬味はなんとなく使い切りそうなもみじおろしを添えてみた。
表面は揚げ焼きのようになり、カリッと香ばしい。
身もまたボソッとせずに、細かい繊維が解けるようになりながら味を開花させる。
もみじおろしを添えてみたものの、味付けは塩だけで十分であった。
クロムツの西京焼き

黒むつの西京漬けという名で流通する製品は少なくはないが、その殆どは輸入品。
水産業界ではカーディナルフィッシュと呼ばれる、和名オオヤセムツであることが殆どである。
こちらは過去に書いたことがある。
これぞ本来のクロムツ、それも凍結をかけていない生魚を使っているので、ふっくらとした質感は明らかに段違いである。
脂も上品さがあり、口当たりが優しい。
半身を丸っと味噌に漬ければ良かったかも、と思えてくるほどに美味しい。
クロムツの椀

クロムツはあらかじめ蒸しておく。
汁が完成前に皮の表面を炙り、それぞれに大葉みそ、柚子胡椒を添える。
かつお出汁と合わせてアラから取った出汁を濁らないようにじっくり抽出し、ここへ蒸した切身の表面を少し炙れば完成!
柚子胡椒と大葉みそをそれぞれの切身にのせて、味の違いを愉しむ。
まずは大葉みそ。
違う甘さのクロムツの脂と、いい具合に調和する。
塩気のある汁とともに味わうと、まろやかな甘味が溶けだす。
一方で柚子胡椒。鼻の中を柚子と脂の香りが通り抜けていく。
ピリリと辛味があるから臭さを感じないものかと思えば、元々臭みがないものだからこそ調和が取れているということが分かる。
どちらにしても上手い合わせ方が出来たと自画自賛である。
また下焼きしたので形も崩れず、食感も柔らかすぎないのでホクホクとした旨さがある。
クロムツの評価
価格 ・☆☆☆☆
コスパ ・・☆☆☆
珍しさ ・・☆☆☆
味わい ・☆☆☆☆
価格
・あらゆる水産物の初物など、べらぼうに高いものを除きごく普通の日で非常に高価なネタ。
コスパ
・歩留まりが良い、という以上に、どんな破片も無駄にはできないという気持ちが強い。今回は出汁に使ったが、骨も硬くないので揚げるなりすれば食べられる。
珍しさ
・ムツと混同して流通するため、正確に同定するには有孔側線鱗数などを見る必要があるが、それでも市場流通するものは圧倒的にムツが多いように感じる。見ると何となくそうかな。というものも稀に見るが高い。など、一般ではなかなか入手するのが難しい魚であると思う。見つけることもそうだが、見つける以上に見われる力を要する魚でもある。
味
・値段相応の価値がある魚。これは高くとも、一度は味わってみる価値あり。
今回は2025年、トップクラスに高かったうちのひとつであるクロムツを紹介した。
一度お目にかかりたいと思っていた魚種であったが、これ以降も見ているとほぼ混同してやって来る事は少なく、ムツは複数まとまり、クロムツは数本、といった様子である。
次食べられるのは果たしていつなのか、といった価格帯の魚だが、また出会える機会があれば食べたいと思うところである。
副管理人:夢海 未利用魚の有効活用方を探して、様々な魚種を食べて美味しく食べられる方法を研究しております。今まで550種以上の魚類を食べてきました。変わった魚の食べ方を中心に公開させて頂きます。どうぞよろしくお願いします! Twitter: @YUMEUMI27 ブログ: 夢海のまったり魚日記


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