見た目は地味でも主役級、秋のヒゲソリダイ

 

こんにちは、夢海です🐟️

 

今年は色々色々いろ…と取り組んでいて、例年にはない忙しさが続きます。

魚を調べる・食べる・まとめる。事に加え、各地の水族館で出会った記録を表にまとめたり、何万とある画像を整理したり、本格的に作業にとりかかれていないけれど標本も進めたりとする日々です。

 

そんな中で季節はコロリコロリ変わり、暑い時期が長くなったとは言え夏はあっという間に感じました。

さて、ここから本題。

魚を計測したり食べたりを日々繰り返していますが、開市日は市場へ出ることも日課にしており、当然気になるものを見つけるたびに購入してきます。

 

この魚が良さそうだ。そろそろ時期なのか。と1年の早さを感じます。

 

 

ヒゲソリダイの特徴

今回のヒゲソリダイは長崎県産。

荷主を見ると長崎市近辺のものであろうと思われます。

今回の個体のサイズは39.3cm1298gと、久しぶりのヒゲソリダイであり、久しぶりの大型個体となります。(確か前回は23年の3月頃に豊洲で活〆の500gくらいのもの)

 

この魚を秋に見かけると、とあるエピソードを思い出します。

18の秋の日、地元の魚屋で初めてヒゲソリダイというものに出会いました。

 

一見茶色く目立たない容姿で、図鑑に載っているものの、隣のヒゲダイという名前もシンプルでインパクトのある魚に視線を持っていかれます。

そんな事もあり図鑑を読み足りていなかった私にとっては比較的最近になり存在を知った魚で、その札も並べられていないナゾの魚を、思わず「コショウダイですか?」と聞いてしまいました。

すると後ろの奥さんが「カヤカリだよね。」なんて話しているのが聞こえ、後に調べてみるとヒゲソリダイという魚である。というところに落ち着きます。

 

ヒゲソリダイ。という印象強い名前をしているのに、初めて聞いた名前は地方名であるカヤカリである。という珍しい出会い方をした魚なので、ある意味思い出のあるものです。

ちなみにカヤカリとは新潟や秋田などで呼ばれているそうで、茅を刈る季節に旬を迎える。大獲れになる。という意味合いから呼ばれているそうです。

現在の私であればおそらくその御夫婦に色々地域の事などを深掘りして聞いていたことでしょう。

 

地方の事は地域の方に聞くのが一番面白いと感じられます。

 

さて、今回のヒゲソリダイに話を戻します。

 

やや頭が大きく見えるのは産卵後でまだ完全復活!してないからと思われ、これから秋が深まると共に肥ってくることでしょう。

 

ヒゲソリダイの"ヒゲソリ"は髭を剃ったような後から。

実際には細かい毛がビチっと生えているのであって、正確にはヒゲソリノコシダイである。

 

体側には、若いほどコショウダイに似た模様が目立つが、大型になると薄れていく。

今回の個体は消えかかっています。

 

ヒゲソリダイを扱う上で知っておきたい知識は、名前の由来以上に鰭の棘条が強いことであることをここに述べたい。

背鰭をはじめ、臀鰭にも目立たない強い棘条があり、3枚に卸す際は特に気を付けたい。

ちなみに私はこの臀鰭の棘条に何度も泣かされている。

 

↑臀鰭そのものも目立たない形だし、それ以上に棘は体にくっつき隠れている。

 

鱗は容易に落とせるが、やはり棘で手を刺してしまわないよう要注意。

 

鱗が綺麗に落ちたら卸していきます。

 

体高があり初心者向きではないものの、身の密度は高く、且つ脂のある個体であれば魚を切っているとは思えないほどに包丁が重たくなり、慎重に慎重に卸せます。

 

今回の個体は身の内側こそまだ透明感があり、内蔵も脂肪が詰まっていないため、季節には少々早いのだろうなと予測がつくものでしたが、化けたのは皮を引いてから。

 

卸したとき以上に包丁が重たく、引き終えると包丁にはべったりと脂が付着します。

体高があるので背腹で切り分けて皮を引くと上手くいきます。

今回は背の皮を引き、腹は皮目を炙って焼霜に。

 

反対側の身は骨付きのままで調理。

サイズからしても上手に使えば8品は作れるところ、今回は他にも食べる魚がいろいろいろと来ていたので最低限の基本的な料理で頂くこととします。

 

 

ヒゲソリダイの料理

ヒゲソリダイの握り

一品目は握りから。

 

ヒゲソリダイを食べたことがあるという人は一定数いても、寿司のこの味を知る人はほんの一握りではないでしょうか。

東京江東区の下町のとある回転寿司屋ではヒゲソリダイをよく好んで扱っていて、二回に一度はヒゲソリダイを食べられるというほどに品書きに入れている店はありますが、本種を寿司として提供する店はそう多くはありません。

白身文化な西に行くと出会える確率は高くなるでしょうが、都内ではほんのごく僅かとなるでしょう。

 

まずは腹側の焼霜から。

 

オホホと笑いがこぼれてしまう旨さ。

実に美味い。

一口目の香ばしさが広がる様子と、後から後からじわじわと強まってくる甘み。

 

腹周りは脂がさすがに集中していて、脂に旨味が混ざり合い全体的に濃く、味が非常に大きいです。

 

通常のものがどうかというとこちらも美味。

 

まったりした甘みがあり、これがシャリを包むと見事な一体感を見せ、馴染み合い溶けていきます。

今回は単にわさびでつけましたが、塩や柑橘とも相性良し。

炙りにも柑橘があう点を見ると、姿は似ずともイサキ科らしさを感じられます。

 

ヒゲソリダイの塩焼き

骨付きの尾側の方から。

まずこちらは塩焼きでいただきます。

塩をしてラップをかけてひと晩寝かせ、翌日に水分を拭き取り、仕上げに軽く岩塩を振りかけて焼き加減を見ながら焼き上げます。

 

ヒゲソリダイは特に皮に脂が集まる魚のため、皮付近は揚げ焼きとなり、非常に香ばしい香りを発する焼いて美味い魚です。

 

口へ運んだ途端に広がるガツンとした旨味。

脂と肉汁が溢れては混ざり、ジューシーなのに控えめな脂で後味はしつこくありません。

この磯魚でありながらクセの強すぎない味わいこそヒゲソリダイの味であり、この味を求めて度々買いたくなる魚です。

 

ヒゲソリダイの煮付け

骨付きで切り身にしたうちの頭に近い部位を煮付けに。

まずは熱湯をかけて鱗やヌメリをしっかり落とし、あとはお好みで煮付けるだけ。

 

今回は醤油とたっぷりの砂糖で甘辛く煮つけましたが、ヒゲソリダイは味噌煮も合うであろうと考えていたのを作ってから思い出し、しばし後悔。

これはシーズン中にもう一度買わねばなりません。

さて、目の前の醤油で煮た美味そうなヒゲソリダイに注目。

 

皮はどちらかといえば厚い、厚いというかしっかりとしたゴム質のような破れにくいものなのですが、じっくりじっくり弱火で煮たおかげで箸で簡単にほぐせます。

身と皮をつかみ口へ運びます。

脂が汁に溶け出る煮付けは、焼きに比べると一口目のインパクトが薄れるものの、あとからじわじわと味わってくる旨味の強さがあり、煮汁と絡めつつ食べるのがたまりません。

 

白米が欲しくなり、レンチンをしたご飯と共にいただきます。

 

ヒゲソリダイの唐揚げ

刺身用にスライスし、腹いっぱいだな。ヅケて明日に回そう。と考えたものをひと晩忘れ、さすがに生で食うには日が経ってしまったな。というものを揚げたもの。

ヒゲソリダイの漬けは食べたことがない。くそう、惜しいことをした。

 

しかしこの刺身状に切った唐揚げというものもうまいなという発見が出来ました。

くるりんと丸まり、且つ1枚10〜15グラムほどなので軽く食べられるというのが嬉しいです。

スナック感覚でつまみ、塩をかけたりレモンを絞ったりと自由な料理である事が何よりも嬉しく、刺身状にカットした唐揚げというのは他の魚でも試したくなります。

 

この唐揚げは皮も引いてしまったのでヒゲソリダイである理由は薄れてしまいましたが、加熱すると適度に締まり、魚の旨味が感じられるヒゲソリダイは揚げても美味しい魚です。

 

 

ヒゲソリダイの評価

価格   ・・☆☆☆

コスパ  ・・☆☆☆

珍しさ  ・・・☆☆

味わい  ☆☆☆☆☆

 

価格

・安くはないもの。味の良さなどから価格は白身の中でもやや高値安定。

 

コスパ

・歩留まりはいい。頭やあらも使える。出汁が出てうまい。

 

珍しさ

・水揚げ自体は関東では珍しいものの、流通では全く見ないわけではない。長崎などからまとまってやってくる。

 

・非常に美味。歩留まりが良い上に味も良いと来た。

 

今回は久しぶりのヒゲソリダイに舌鼓をうちました。

思えば毎度刺身か焼くくらしいか試したことがない魚で、今回の唐揚げは油を使った初めてのヒゲソリダイの料理であったかも。と思い返します。

近年では豊洲でもまとまってやって来ている魚になったのだそうで、個人的には普段意識して探す魚ではないものの、1日を思い返して脳内で市場を歩くと、どこかしらの視界に入っているな。という映像がぼわわっと思い浮かべられます。

 

ライター紹介

副管理人:夢海 未利用魚の有効活用方を探して、様々な魚種を食べて美味しく食べられる方法を研究しております。今まで550種以上の魚類を食べてきました。変わった魚の食べ方を中心に公開させて頂きます。どうぞよろしくお願いします! Twitter: @YUMEUMI27 ブログ: 夢海のまったり魚日記

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