春のマグロはビンナガ
こんにちは、夢海です🐟️
早速ですが、今回は念願の魚です。
たぶん一番欲しいと言っても過言ではないほど、長い事探していたものである。
"ヒレナガ"と書かれた箱を見つけて舞い上がったものの、その中身はキメジであった。なんてことがあった昨年秋。
そのキメジは非常に美味であったものの、ヒレナガで連想されるマグロといえば、長いこと探しているビンナガの事を思い浮かべる。
目次
ビンナガの特徴

さて、タイトルで春代表。などと謳ってみたものの、最近ではキハダも春に見られ、様々な産地からやってくる本マグロがあれば、メバチも負けていない。
と、考え始めると、そもそも春はマグロの季節なのでは。
なんて、後からじわじわと考えていた事だが、兎にも角にもビンナガは私の中で春を代表するマグロだろうと、思えます。
そして本種は長いこと欲しいと考えており、5種いる日本産マグロ属の中で唯一入手・撮影が出来ていないものでした。
普通流通するものは8㎏ほどから10kgに迫る勢いの大きさですが、今回のものは4600gほど。
潮の流れの影響があるのか、今年は5kg前後の小型のものが多く見られ、市場でも度々目にする。
このビンナガ、冷凍品での流通が主流、いざ食べるとなれば容易に入手可能。
生のものであっても、最盛期の春を迎えれば都内でも比較的手に入りやすい魚です。
しかしこれをいざ丸で買おう!となっても置いている場所はなかなか見つからず、見つけても10kg前後になりなかなか一般家庭では扱えるようなものではありません。
そのため長年小型のものを探しに探していたところでした。
ということで、今回の魚はビンナガ。和歌山県産の定置で揚がったものだそう。
となると、頭部に見られる凹みは釣り上げた際の衝撃でなく、成長過程のケガと言うことが考えられます。

ビンナガ最大の特徴はこの長い胸鰭。


メバチも同様に胸鰭が長いマグロですが、こちらはより細くシュッとした形状です。
小離鰭や臀鰭、第二背鰭など、他のマグロ類では黄色い鰭も本種は暗い色合いで、全身を見ても他のマグロ以上に機械的な見た目は、なんとも渋カッコいい。
他のマグロ類では退化している鱗も本種は目立ちます。


背の黒い皮も他のマグロ類に比べ幅が広く感じられます。

身はしっかりして程々に硬く、おろすのは他のマグロ属に比べて比較的容易。
そして内蔵を覆う肋骨が短く、腹骨が他のマグロよりも下に伸びており、骨格の構造も異なるように思える。

4キロもあるのに色はあっさり。
同じサイズのキメジですら色味は出てくるのに、大型の個体でも身の色が薄いビンナガは、個体の大きさによる味の差が少ないのかもしれません。
ビンナガの料理
ビンナガの刺身

まず初日に刺身でいただきます。
卸した腹の真ん中のブロックを切り分ける。
釣られて翌日の晩に食べたということもあり、身はもっちり。
醤油よりも塩で味を際立たせるのが良い。
わさびよりもスダチだな。と言ったものの冷蔵庫にはスダチがない。
国産果汁100%のレモン汁を少し垂らし、塩で食べる。
春って、酸っぱかったり、苦かったりするものがやたらと美味しい。
ビンナガの握り

白身のネタがあったので、酢飯を用意し握ってみた。
ほんのり温かいシャリの温度に乗せられてマグロの香りが漂う。
淡い味わいで、酸味も目立たず、生なのでもっちり柔らかい。
桜色の身とほんのりした香りが春だな、と思わせる一貫である。
生のビンナガは風味が良く、寿司にして外れない。
極々たまに、生のビンナガを置いてくれているところがあるが、喜んで何貫も食べてしまう。
ビンナガの中落ちネギあえ

卸した際に骨に残った身をスプーンでそぎ取り、軽く塩をしてネギと和える。
ここにちょこんと醤油を垂らす。
血合いも混ぜているので色味が濃くなり、風味も増す。
血合いも使っているので臭みが気になればごま油を少し垂らすといい。
味噌を混ぜて味噌たたきにしてもいいし、山芋を刻んで入れても、塩をして1日2日寝かせてみてもいいツマミになる。
ビンナガのセビーチェ

ビンナガは柵取りし、これをサイコロ状に切り分ける。
トマトやキュウリも一緒に切っておき、仕上げにライム果汁を絞ってなじませる。
食欲をそそるライムの香りが、カルパッチョなど食べなれたものと違い、異国感がある。
あっさりして後味もしつこさの無いビンナガだからこそ、ライムの果汁ともケンカせずに非常によく噛み合っている。
まだ暖かくなる前に食べたものだが、夏場にぜひ作ってみたいものだ。
ビンナガのポキ

サイコロ状に切り分けたものをポキ丼にしてみました。
具材はセビーチェとほぼ同じ。
ライム果汁は使用せず、ごま油、醤油、少々の酒で作ったタレをかけて完成。
個人的な好みで仕上げのとびっ子は欠かせない。
ポキ丼にもよく合うもので、タレの風味に隠れず、後味はビンナガの味がじわじわとやってくる。
これは解凍の柵でも作れるので、安くなっている柵など、
ビンナガのハラモ一汐焼き

ビンナガのハラモに塩をしておき、ひと晩寝かせて軽く乾かしたら焼き上げる。
魚体サイズが小さいのもあり、冷凍輸入品に比べ脂は程々。寧ろ濃すぎず、有り難いくらいの濃さである。
味がしっかりあるので、このハラモ一本にしても十分なおかずになる。
箸で小さく切りつつ、チマチマ摘む。
マグロという事を忘れて、青魚っぽさのない、美味いサバだと脳が認知している。
レモンと塩が合う魚だ。
茶漬けという選択肢も悪くない。
ビンナガフライ
※画像は撮り忘れました。
切身にして血合い付きのままフライにしてみた。
脂は薄めで水分も他のマグロに比べるとやや少ない。
あまり揚げ物との相性は良くないのかな。なんて考えながら揚げてみたものの、これが美味い。
チキンカツとして出されても分からない程で、油で揚げたことを忘れるくらいに口当たりが軽い。
魚の風味も(いい意味でも悪い意味でも)薄めで、クセがなく食べやすささえ感じられる。
鶏肉らしさがあっても、こちらは魚の繊維はほぐれやすい為、筋が気にならない。
ビンナガのバター焼き

柵取りをしたビンナガに塩、胡椒、バジルを振り馴染ませる。
これを焼く直前に小麦粉を軽くまぶし、バターでソテーする。
脂の薄い個体なので単に焼いてしまっても硬くなるだけなので、これをバターの油で補ってみた。
シトっとした食感で、密度の高い身が美味しい。
ビンナガのパン粉焼き

蒸したジャガイモをカットし、アルミホイルにオリーブオイル、ジャガイモ、生のビンナガの切身を乗せ、好みのハーブとパン粉をまぶす。
上にバターを軽く乗せ、ガスコンロで焦がさないようこまめに見ながら焼き上げる。
オーブントースターがあればトースターがオススメです。
仕上げに生のバジルの葉を細かくして散らします。
焼き上がりはどうだろう。と、一口。
これまたバター焼きやフライとは異なる質感で、より白身らしさが増したような気がします。
おそらくは上に乗せたバターで揚げ焼きのような状態になり、しっとりした質感でボソつかない。
案外、焼いてもいけるものである。
ビンナガの割下鍋

最近、小型のメジマグロ類が入ると欠かさないのが割下。
割下のつゆで食べるネギマ鍋なので、当然美味しくない訳がないものの、種類によって差があり、個体や時期によっても味が変わる。
今回のビンナガはめじ(若い個体)ではないのかも知れないけれど、以前紹介したキメジなどど使い方は変わらない。
少々硬くなりすぎてしまい、ボソッとした質感が目立ってする。
ビンナガのカマ塩焼き

長い長い胸鰭に見とれて、これを標本のようにしようかとまじまじ観察する。
しかし食の話となると当然主役は鰭ではなく、カマの肉となる。
これに塩をして少々寝かせる。
最近は魚ごとの塩の入れ具合、寝かせ具合が上手くなったと自画自賛している。
今回のビンナガは塩をして3時間、冷蔵庫でほったらかしにし、汁気を拭いたらまたひと塩し焼き上げるという工程にしてみた。
塩焼きは塩をして焼けば完成!手間がかからずすぐ食べられる!を考えていたものの、最近は寝かせると味が馴染んで美味しく感じられる。
ビンナガの評価
価格 ・・・☆☆
コスパ ・・☆☆☆
珍しさ ・・・☆☆
味わい ・☆☆☆☆
価格
・マグロとしては安価。買い求めやすい。
コスパ
・基本的には丸買いする魚ではなく、柵で買うことが多い。柵でもかなり安い。
珍しさ
・食材としては一般的。冷凍品は普通に流通し、いつでも買える。春など、本種の揚がる時期になれば生の柵も買い求めることが出来るが、ラウンド(丸)は市場でも購入が困難。
味
・あっさりとしており、春先の目が覚めるような時期にちょうど良い。脂は腹に集中し、焼くと美味である。
今回は念願のマグロ、ビンナガを丸買いしてみた。
結果、書きまとめるのに半年近く掛かってしまい、秋の漁まで状況が色々と見えてくるようになった。
まず、この個体を購入した当時は黒潮大蛇行の収束は発表されておらず、恐らく今年も温暖な海の魚を多く扱う1年になるのだろう。なんて呑気に考えていた。
その中でカツオの不漁というものがどうも引っかかる。
来年のビンナガに影響はないのだろうか?
今回の個体の産地である紀伊半島など、本来黒潮が当たるべきところに当たらなかった時期が続いていたり、来年の影響がどうなるのか心配である。
副管理人:夢海 未利用魚の有効活用方を探して、様々な魚種を食べて美味しく食べられる方法を研究しております。今まで550種以上の魚類を食べてきました。変わった魚の食べ方を中心に公開させて頂きます。どうぞよろしくお願いします! Twitter: @YUMEUMI27 ブログ: 夢海のまったり魚日記


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