小笠原の”おじさん”にオジサンが混ざっていた
こんにちは、夢海です🐟️
多種多様な魚が流通する水産の世界では、和名とは違った名をつけられることも多々あります。
それは産地によって異なりもし、産地が広い魚ほど多岐に渡ります。
その中のひとつとして、広い産地でオジサンと呼ばれるものがあります。
ユニークな名前、姿からメディアなどでも度々見かけ、知名度もそれほど低くない魚です。
しかし、殆どの水産従事者の脳内に浮かぶのがホウライヒメジやオキナヒメジといった、食用で流通する大型のヒメジ科魚類になり、一般の方などはそれら食用で流通する種類に加え、あらゆるヒメジ科魚類を見て「”オジサン”だ」と認知する事が多いでしょう。
これらの事を実際に目撃する機会が多いことからも、表面上を見ていると標準和名以上に別名が有名になっている状況であると感じます。
そんな数多の”別名オジサン”が属するヒメジ科魚類の中から、正真正銘、オジサンの標準和名がついた魚に出会えたので書いていくとします。
目次
オジサンの特徴
今回の魚はオジサン。
小笠原からやって来ていたようで、色箱(複数の種類の魚が集まった荷)に色々混ざっていました。
アカイサキ、ホウライヒメジ、オジサン、ハナフエダイなどのメンバーで、そのうちからオジサンとハナフエダイを購入。
ホウライヒメジと共に"オジサン"として売られていましたが、魚屋の中で、本種が正真正銘のオジサンであると認知している人はほんの一握りだと思います。
魚屋で2つ並んだ"おじさん"と"オジサン"を指差しして、「このおじさんのオジサンのほう」なんて言った日にはおかしな目で見られる事間違いなし。
オジサンは2度目の入手となり、前回は沖縄で釣り捕獲した個体を、フォロワーさんから送って頂いたものでした。
その個体はやや白みが強い体色で、やや小柄でしたが、今回のものはそれとは正反対と思える赤く、オジサンとしても大きめのサイズです。
↑言わずもがな、”おじさん”の由来は下顎から生えた2本の髭。
腹ビレにはパープル色のラインが複雑に混じる。
尾鰭は深く湾入し、上葉下葉共にやや膨れた形をしている。
大きい鱗を剥がしたらおろします。
今回の個体が亜熱帯の父島のものという事もあってか、身はやや白濁しますがどうも脂は感じられません。
そうなると隣のホウライヒメジはどうであったのか。
九州産を中心に食べてきて、思えば父島のものは見たことがなかったな。と、帰宅してからホウライヒメジも買わなかったことを後悔しました。
オジサンの料理
オジサンの刺身
まずは刺身から。
焼霜や湯引きなど、皮を使うという手法も考えましたが、単に筋肉の味を知りたかったので今回は皮を引きました。
口に入れると、単に磯だとも言い切れない独特な香りが広がります。
耐えられないというレベルではないものの、人によっては臭みとも個性とも捉えられる位には主張してきます。
しかしまだ2個体しか食べたことがないため、本種の味をこれで評価してしまうのは勿体ないので、また食べて検証するとしましょう。
身の質は程よく締まり、食感としてはコラーゲン質が強く感じられ、柔らかいものの勝手に溶けていく様子はありません。
見た目では濁っていて味もありそうだ。なんて考えられるものの、実際にはやや物足りなさも感じます。
オジサンのバター焼き
もう一品は骨ごとバターでソテーしたバター焼きに。
見た目の華やかさも相まって、熱帯を思わせる仕上がりになりました。
皮はパリッと、身は引き締まり筋肉のふしが簡単にほぐれて食べやすいです。
焼き上げたことで刺身で感じられた独特な香りはほぼなくなり、淡々とした質の筋肉にバジルやタイムといった香草がよくなじみます。
塩をして少し置いたこともあり、旨味は凝縮されこの魚の旨味がよく感じ取れます。
そしてヒメジ科魚類の面白い点が、皮目から強い甲殻類のような香りがします。
これが真に不思議ながらも美味く、ヒメジを焼いて食べるというひとつの目的となります。
皮は厚みがあり、バターでしっかり焼くことで身とは違った食感となり、よりおいしくなります。
他のヒメジ科の魚に比べてオジサンはやや水分が多く、火を通すと硬く締まる性質。
生よりは加熱向きな魚であるのかな。と、今回の個体は結論付けました。
オジサンの評価
価格 ・・☆☆☆
コスパ ・・・☆☆
珍しさ ・・☆☆☆
味わい ・・☆☆☆
価格
・ホウライヒメジなどと混じりで来る場合は一般的かやや高い。赤い魚であり、大きさも1キロに満たないなど、一定の需要があるもののため思いの外値がつく場合もある。小型のものは流通の場に乗らない雑魚的なものであると考える。
コスパ
・頭はやや大きく、歩留まりがいいものではない。大きくとも500g前後のものが普通なので姿のままでソテーするなどの方が効率的に食べられる。
珍しさ
・"おじさん"の名で流通するホウライヒメジやオキナヒメジなどは入手が容易だが、他のヒメジ科魚類を含めて考えても本種は珍しいものだと思う。流通の場で探すには根気が必要。東京で探すよりも、沖縄などの産地で探した方が恐らくは早い。
味
・今回の個体は生食でやや癖が感じられた。が、これは一般的なものなのか個体によってなのかの判断が出来ないため不明。加熱して適度に締まり美味。
今回は、”おじさん”の標準和名オジサンを頂きました。
久しぶりの、というより市場では初めての遭遇に思わず叫びたくなるほど嬉しい出会いとなりました。
とはいえ小さい魚で満足に品数を用意できたわけでもなく。どの魚にも言えることですが、この魚を知れるほど食べきれれていないと感じます。
まさかホウライヒメジに混ざっているとは、話こそ聞くものの夢にも見ていなかったのでこれからは注意深く見ていくこととなるでしょう。
大衆魚ほどの扱いやすさこそないものの、話題作りにもなるので見かけた際はぜひご賞味あれ。
副管理人:夢海 未利用魚の有効活用方を探して、様々な魚種を食べて美味しく食べられる方法を研究しております。今まで550種以上の魚類を食べてきました。変わった魚の食べ方を中心に公開させて頂きます。どうぞよろしくお願いします! Twitter: @YUMEUMI27 ブログ: 夢海のまったり魚日記
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